京都躍進の秘密 日本交通公社・旅行動向シンポ
財団法人日本交通公社は12月16日に開いた旅行動向シンポジウムで、最近8年で入込数を1000万人増やすなど、観光分野で躍進する京都を取り上げた。京都市職員時代に観光政策監として数々のイベントを仕掛けた清水宏一さんと、立命館大学大学院教授で「日本へ回帰する時代」「京の着眼点」などの著書がある谷口正和さんに、「京都一人勝ちの秘密(わけ)」を聞いた。
本質回帰と仕掛けが奏功
京都市の観光入込客数は1970年代から90年代中ごろまでの25年間、年間4千万人前後で推移。これが90年代半ばから13年連続で増加し、最近8年は過去最高を更新し続けている。
谷口さんは、世界第2の工業国という「行くところまで行った」日本は本質回帰の時代にあり、それは「日本に帰ろう」という思いに至り、直感的に京都が選ばれると、今の京都の意味と人気の背景を説明した。
「京都には自然に感謝して生きる生活がある。リデュース、リユース、リサイクルが息づき、サスティナビリティがある。物や金を持っていても幸せになれないと知った人たちが、納得できるステキな時間を過ごしに京都に出かけている」。谷口さんは、そうした旅行をライフスタイル・ツーリズムと呼んでいた。
清水さんは、「1996年から3期務めた桝本賴兼・前京都市長の功績が大きい」と京都躍進の理由をあげた。桝本前市長の「これからは観光だ」の掛け声のもと、京都市は2000年から10年までに観光客数を当時の3900万人から5千万人に増やす目標を設定した。
「分かりやすい目標設定、ITを活用した京都市の宣伝、新選組、義経と京都関連のNHK大河ドラマの放映、JR東海のテレビCM、オフ期のイベント展開で目標年より2年早い08年に5千万人を達成した」と清水さん。
市役所が京都市のニュースを作り、それをITで雑誌や新聞にリリースする。雑誌や新聞を見て今度はテレビが取材にくる。それを見た観光客が集まる。
テレビを引っ張りだすためのこうした手法の確立や、オフ期だった12月に立ち上げた「京都花灯路」イベントが、10日間で100万人を集客していることなど、観光客を自ら作り出してきたと自信たっぷりに語っていた。
景観条例の制定、着物観光の促進、QRコードによる観光案内、コンビニに預けた荷物がホテルに届く仕組みづくりなど、仕掛けとイベントで観光客は作れる。
京都市のキャッチフレーズは「日本に、京都があってよかった」。京都市役所職員が考えたそうで、ここにも溢れんばかりの自信が伺える。
しかし、もう観光客の数は追いかけない。「観光客は5千万人でいい。これからは観光客の質を追求します。質とは消費単価です」と清水さんは意気込みを語っていた。