由布院に学ぶ 鳥羽市温泉振興会・講演会
三重県の鳥羽市温泉振興会(吉川勝也会長)は1月25日、新春観光講演会を開いた。振興会の恒例行事で、今年は大分県・由布院温泉観光協会の桑野和泉会長を講師に招いた。会場の鳥羽商工会議所ホールには市民や県内各地から過去最高の160人あまりが聴講に訪れた。
過去最高の160人が聴講 観光まちづくりに関心
桑野さんは、由布院のまちづくりで大切にしてきたことを「環境を守ること」「いろんな世代が一緒になって議論できること」「開かれたまちであること」と紹介した。開かれたまちとは、JR九州の由布院駅に改札を設けず出会いの場としていることや、旅館も宿泊客を"囲う"ことをせず、他館のパブリックを利用し合うことを指している。
「1軒の宿ではなく、由布院のまちトータルで満足していただく。その結果、年間400万人にお越しいただき、90万人の方が宿泊するようになりました」。宿泊客の6割はリピーターで、そのうち10%は10回以上の来訪者だという。
また、各宿で心がけている「土地の旬なものを食べてもらう」食事を例に、「観光地ができることって、実はひと手間かけることだけなのです。ひと手間かけることによって価値を生み、その価値をお客様に返す。その循環です」。
そして今、取り組んでいるのは環境、景観保全だという。「お客様に由布院を選んでいただけるのは、田舎こその美しい風景だと思うんです。それは自分たちの暮らしを守ることでもあります。10年、20年というスパンで電線地中化を始めていきます」と話した。
桑野さんの前に講演した財団法人日本交通公社の梅川智也さんは、鳥羽観光の課題として「観光案内サインがバラバラ。マスタープランを立て設置すべき」。市内の旅館ホテルで実施した顧客満足度調査で「満足度は決して高くない。施設、場所によって大きく異なっており、一部の施設が全体の足を引っ張る恐れがある」と指摘した。
ただ、鳥羽の強みは入湯税が観光まちづくりの自主財源になっており「全国のモデルになる可能性がある」と語った。