滋賀の自然生かす 滋賀県旅行業協会・ヘルスツーリズムガイド養成講座
協同組合滋賀県旅行業協会(矢野明理事長)は6月、ヘルスツーリズムのガイド養成講座を4回連続で開講した。県の協力を得て初めて取り組んだもので、定員を大幅に上回る約70人が受講。森林療法や自然ガイドの専門家を講師に招き、琵琶湖周辺をフィールドにしたヘルスツーリズムなど、着地型ツーリズムの担い手を養成する。全講座を受講した人には修了書を発行し、旅行業協会が登録、滋賀県内の着地型旅行の企画催行時に受け入れ協力などを呼びかける。
森林の医療効果はガイドの案内が促進
6月11日に行われた第1回の講座では、日本医科大学講師で、森林医学研究会代表世話人も務める李卿(り・けい)さんが「森林の医療効果について」と題し講演した。
李さんは、森林浴の医学的効果を実証しようと2005年から3カ年に渡って、長野県飯山市や信濃町などで行った実験結果を紹介。東京都内で働くサラリーマンやOLを2泊3日の日程で森林環境下に置き、抗がん能力を高めるNK(ナチュラル・キラー)細胞の活性や、ストレスに影響のある尿中アドレナリン濃度などを測定した。
実験の結果、被験者の数値は男女差なくいずれも改善し、森林浴が健康増進につながることが医学的に初めて実証されたという。
李さんは「2日間程度の森林浴で、その効果は1カ月程度持続することもわかりました。ですから月に1回は森に出かけることをお勧めします。日本人の長寿は森林に関係があるのです」「ただ、漠然と森を歩くと逆にストレスになるかもしれません。いずれの実証実験も自然や歴史文化に詳しいガイドが同行し、コミュニケーションや休息を意識的にとることで改善したのです」とガイドの重要性を話した。
今後、李さんはメタボリックシンドロームの改善と森林、森林浴と温泉浴の効果などについても実証実験を予定している。「森林浴には、がん予防効果やうつ状態の改善など10の効果が確認されています。でも、病気になったら迷わず病院に行きましょう」と話し、笑いを誘っていた。
矢野理事長は「これまで我々はアウトバウンドばかりでしたが、これからは滋賀県の魅力、森林浴を全国に発信しインバウンドに取り組みたい。これだけ多くの方に参加いただき手応えを感じています」と話していた。
「宝」探してエコツーリズム実践
最終日となった6月25日に行われた講座は、京都嵯峨芸術大学観光デザイン学科教授の真板昭夫さんが登壇。「ニューツーリズムにおける地域開発とガイドの専門性について」を演題に、エコツーリズムの定義と意義、地域おこしの手法を説いた。
エコツーリズムとは、自然と人間、地域の共生であり、この関係を持続可能にすること、自然と地域の関わりをおさえることを基本概念として紹介。その上でエコツーリズムは、地域の「宝探し」から始め、地域づくりにつなげていくという方法論を展開した。
「宝探し」には時間がかかるものの、郷土意識や環境保全意識の醸成、地域活性化など地域への貢献効果をもたらすメリットがあり、エコツーリズムによる観光まちづくりに取り組む意義を強調。その推進には地域住民、行政、旅行会社、研究者、観光客が関わる組織づくりが不可欠だと訴えた。
真板さんは最後に「エコツーリズムには『五感に訴えるシナリオ』が必要。見たことがない、食べたことがない、かつてない体験、住みたくなるまちの4要素は旅行者にワクワク感を与えます。これらがあってこそツアー化につながるのではないでしょうか」と提言していた。