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旅行需要創出へ「農業観光」や「位置ゲー」 じゃらんRC・観光振興セミナー

リクルート旅行カンパニーじゃらんリサーチセンター(JRC、沢登次彦センター長)は8月20日、大阪市此花区のホテル京阪ユニバーサルタワーで「観光振興セミナー2010」を開いた。地域おこしへの参考にしようと集まった自治体ら参加者に、農業観光や携帯ゲームを生かした旅行など、新たな旅行需要の創出に向け実践したプロジェクト事例を紹介した。

グリーンツーリズムをより身近に、より楽しく

JRCでは地域での観光開発を念頭に研究・実験活動を展開。「父子2人旅」「乳児連れ家族旅行」などターゲットや切り口を明確にしたプロジェクトに取り組んできた。

今回報告したのは、千葉県成田市で取り組んだ「農業観光」。地域ならではの体験を求める旅行者の増加とエコへの意識や農業人気の高まりに着目し、「ポスト・グリーンツーリズム」として市場拡大を目指してプロジェクト化した。

現行のグリーンツーリズムは未経験者にはその魅力を伝えにくいと分析。しかし一度体験すればリピート率は高い可能性があると考え、(1)初心者向け短期間型(2)宿泊と観光をセットに商品化(3)知的好奇心に訴える内容で旅行動機を与える―ことで、まずは一度参加させる旅行形態を提供しようというものだ。

それを形にしたのが昨年10月に実施したモニターツアー「週末は農場ブランチプラン」。都会で働く20―30代女性を主要ターゲットに農業体験と農場ブランチを宿泊プランとして提供するもので、特に農業事業者による有機野菜の講座という夜間プログラムや朝からの収穫、植え付け体験を設定するなど宿泊させることにこだわった。農業体験は、観光農園形式でなく、レクチャーをしながら、あくまで農業事業者目線での作業を追求。約40人が参加し、参加者からは講座や農場での食事、農家との交流など本物志向に対して高評価を得た。

発表した横山幸代JRC研究員は、農業観光づくりは「やらせすぎない、囲いすぎない、作りすぎないこと。手取り足取りでなく、自由度の高い知的好奇心をくすぐる内容にすべきです」とポイントをあげる。さらに、実現には「まずは地域連携こそが解決への近道」といい、農業、観光、行政それぞれが理解し合い、得意分野を生かす組織づくりが必要だと説く。

横山研究員は最後に、農業観光市場について「時間をかければリピーターが育ててくれる特性があり、個人旅行だけに伸びしろがあります。始めなければ始まりません。農業と観光が手を組み、お互いの強みを生かして交流すれば事業化できます」と話していた。

リアルとバーチャルの融合で若者市場を開拓

また、低迷が叫ばれる若者旅行の需要創出に向けて取り組んだ、携帯ゲームと実際の旅行を融合させたプロジェクトも報告した。

実証事業は都会の若者を中心に人気の携帯ゲーム「位置ゲー」を使って佐賀・長崎・福岡を巡るバスツアーで、ゲームと観光を連動させることで旅行動機を演出。昨年8、9月に実施し20―30代の男女約110人が参加した。参加者はツアー参加のきっかけはゲームだったが、旅行後は地域の魅力の体験や交流への満足度の高さが目立ち、若者世代の「リアル旅行」の新たな可能性を示したといえそうだ。

セミナーではそのほか、今年度の宿泊旅行調査やご当地調査の結果も紹介し、最新の旅行動向や地域特性を解説した。

セミナーはJRCの観光調査結果や研究発表の場と位置付けたもので、今年で5回目。全国8都市で開催し、大阪会場には自治体の観光担当者や大学関係者など約110人が参加した。

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