美術館とまちづくり 大阪市・市立近代美術館整備に向けてメディアワークショップ
大阪市は8月10日、整備計画を進めている市立近代美術館の具体的な活動の方向性を考えようと、関西の報道関係者を招いてメディアワークショップを開いた。
「教育」「交流」に役割
市立近代美術館は、大阪の芸術文化の伝承とまちづくりに生かすことを目的に、1998年に基本計画を策定。このほど整備計画をまとめなおし、中之島に敷地面積1万600平方メートル、延べ床面積1万6千平方メートル、整備費122億円で建設する案を発表した。開館は2017年度の予定。
芸術文化の発表や教育プログラムを行うほか、市民や観光客が誰でも気軽に立ち寄れる開かれた空間づくりが基本コンセプト。文化・観光エリアとして水都大阪の中心地である中之島の魅力向上につながるコンテンツとして期待される。
市立近代美術館を管轄する市ゆとりとみどり振興局の野々村節子局長はあいさつで、「中之島に美術館を設けることで回遊性をもたせ、観光にも寄与したい。文化薫る都市・大阪を実現したい」と意気込みを語った。
ワークショップは各地の美術館関係者などから先駆的な取り組みを学び、時代に即した美術館像を探ろうと企画。初回となる今回は、石川県金沢市の金沢21世紀美術館館長の秋元雄史さんを講師に、同美術館での取り組みや、秋元さんがディレクターとして関わった、アートの島・香川県直島での経験を学んだ。
秋元さんは、現代の美術館が社会に求められる大きな役割として教育をあげ、同美術館が地元教育委員会、ボランティアと連携して実施している市内の小学生を招いての「ミュージアムクルーズ」などの事例を紹介。ガイドは「見る視点」を伝えることに専念して、子どもの自主性に任せて鑑賞してもらうという取り組みで、これらの企画で子どもたちが何回も美術館に訪れるという成果が出ているという。
美術館のあり方について秋元さんは「周囲の環境とどう結びつくか、どう地域の活性化に貢献できるかが大切」と話す。その上で「誰のための美術館なのか考えるべき。まちとのつながりを考えると、教育普及活動や交流活動が核になっていくだろう」と語った。
また、トークセッションでは、過疎の島だった直島でアートプロジェクトを始めた当初、意識した点について聞かれると「過疎のイメージを変えることが目標だが、島民との関係をどうつくるかが一番。島の皆さんがどう楽しめるかを考え、アーティストと交流し日常を提供してもらうことで関わってもらった」。
最後に、美術館とまちづくりの関係については「高付加価値が求められる時代にあって、文化をつくり出す美術館への期待は大きい。まちのイベントにも積極的に関わるべき。美術館も含めてまちのコンテンツをつなぐ軸となるプロジェクトが必要」と提言した。