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震災復興で果たす観光力 日本観光研究学会・シンポ

東日本大震災から復興へ向けた動きの中で観光の役割を探るシンポジウムがこのほど、日本観光研究学会(横山秀司会長=九州産業大学教授)の第26回全国大会で開かれた。会場の大阪府松原市の阪南大学には研究者、市民ら約200人が集まった。

地域と研究者の協働探る

津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町。1カ月半後の4月下旬、山内正文さんは「商売をしてまちの役に立ちたい」と「福興市」を開催した。全国23商店街で組織していたネットワークが物資を南三陸町に送った。山内さんは「全国の商店街の力はすごい」とする一方、商店街を核にした住民の付き合いの深さが「これからのまちづくりになる」と話した。

北海道大学大学院の依田真美さんは、ボランティアツーリズムについて「現地と参加者、参加者同士のネットワークが形成され、その後に影響を与える観光スタイルが特徴だ。ツアーに参加して終わるのではなく、協働者として地域の課題解決に向かうもの」と指摘。

阪南大学国際学部准教授の清水苗穂子さんは、インド洋の津波で被害を受けたタイ南部のタレノーク村がツーリズムで復興していった過程を紹介した。「漁村にツーリズムを導入して生活復興支援を行い、その後エコツーリズムなど段階を経て、村全体に利益が回るようにしていった」とした。

東北地域環境研究室の志賀秀一さんは「人口減少が進んでいる地域の震災で、これまでの人口増を前提にした復興とは異なる」と指摘。その上で「生活再建と観光をうまくマッチングさせられないだろうか。観光は労働集約型産業であり即効性がある。三陸海岸が一枚岩になり地域を横断化させるのも観光だ」。

また、志賀さんと山内さんは会場に向け「現場に来てほしい」と依頼。地元にとっては励ましでもあるし、忘れられていない確認にもなるのだという。山内さんは「津波の語り部」をまちの観光として打ち出す。

コーディネーターの大阪府立大学特別教授の橋爪紳也さんは「非常時こそ、平時で用意していたものしか使えない。観光力ネットワークを構築するべきだろう」とし、次回も同テーマを掲げて宮城県仙台市で大会を開く。

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