物語性と創造力を 奈良県オープンセミナー・講演
奈良県と奈良県ビジターズビューローはこのほど、奈良市の県新公会堂能楽ホールでオープンセミナーを開き、県内の観光関係者ら約300人が参加した。JTB西日本社長の日比野健さんが講師として登壇し、「魅惑の奈良―奈良へのtemptation」をテーマに奈良県観光の方向性を提言した
JTB西日本・日比野社長が奈良県観光に提言
日比野さんはまず、2010年の平城遷都1300年祭の成果に触れ、奈良県観光の現状を分析した。10年の奈良県の観光入込数は4160万で過去最高、JTBの取扱宿泊人数の全国順位の向上を挙げながら「観光意欲も全国4位、魅力度も全国5位とブランド力が上がった」と話し、「地域回遊性の高まりと、秘宝や秘仏の拝観がフックになった」と指摘した。
次に、ツーリズムのトレンドを紹介。旅が持つ力の1つとして「交流」を挙げ、「旅行者と迎える側が対等なのが今後の旅行の姿。迎える側はまず地域をよく知ることが望まれる」と話した。
着地型・ニューツーリズムの視点では、奈良では「文化観光が考えられる」。その上で「旅行者の参加意欲が高まり、旅行に求めるものが変わってきている。歴史の楽しみ方としては"現代と過去との対話"を求める傾向がでてきた。人との触れ合い、五感に訴えるものを」と呼びかけた。
本題である奈良の魅力については、万葉の歴史から「クリエイティブとイマジネーションの力」と「多様性を受け入れる文化」を総合的なコンセプトに挙げた。それらを体現する多くの素材の組み合わせが重要であるとし、東大寺の「お水取りセミナー」や五條―十津川―和歌山・新宮を結ぶ「日本一長い路線バス」などを例に、「どう物語性をつけるかがポイント。高付加価値の素材を活用して商品化すべき」と説いた。
さらに、インバウンドや首都圏などマーケットへの意識や、旅行会社の活用、20年間隔で振興策を考えるべき、など複数な視点から「世界に誇れる奈良」の進むべき今後について言及した。
講演前には、同ビューローの理事長を務める荒井正吾・奈良県知事があいさつで、「従来"大仏商法"だった奈良の観光も、平城遷都1300年祭を機に変わってきた。奈良の魅力を実感してもらうために努力しており、首都圏にも京都との違いが伝わるなど少しずつ力がついてきたように思う。祭典以降も需要落ちはなく、今後も各所と協力して観光振興を図っていく」と語った。