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売上重視の経営と決別 JTB旅ホ連・経営力強化セミナー

JTB協定旅館ホテル連盟の経営力強化セミナーが5月16―18日に東京・多摩市のJTB研修施設「フォレスタ」で開かれた。17日にはJTB旅ホ連副会長の久保田浩基さん(岩手県・ホテル志戸平)が「東日本大震災を機に売上重視の経営と決別しました」などと震災後の経営戦略の転換について講演した。

久保田さんは、震災後に217人だった正社員を148人に減らした。毎月の売上が半分でも半年は会社を維持できることを考えての決断だった。当時の心境を「社長になって25年、正社員だけで会社を運営しているのが自慢でした。社員を守るために社員を切るという決断があることを初めて知りました」と振り返る。

ホテル志戸平・久保田さん

震災後の経営戦略について
語る久保田さん

2011年5月1日に会社が復興再建するまでのロードマップをつくり、社員に示した。前提としたのは「震災前には戻らない、戻さない」という意識。特に価格競争からの離脱を強く意識した。復興計画は2012年4月までを3つのステップに分けて示したものだったが、5月以降の復興特需もあり、2011年7月には、1年かけて実現する予定の復興計画を達成していた。

業績がV字回復したこともあり、震災を「経営革新のチャンス」だと捉える余裕ができた。震災とは別に、生産労働人口が減るなか、売上を上げて利益を出すという経営は無理。安定した利益を確実に確保していく経営への脱却を目指した。

12年2月には売上を追わない経営の可能性を実証した。「部屋が埋まって安心する経営はやめよう」と、毎年、一番の閑散期である2月をしのぐことだけを目的に旅行会社から送客を受けてきた2泊6食の低価格の団体を断った。数にして5千人を失う決断。しかし、同月の営業利益は同水準を維持できた。

今期、ホテル志戸平の経営基本方針の柱は(1)価値の共感による利益確保の経営(2)社員満足度を上げる経営(3)新たな仕組みづくりの構築―の3つ。価値の共感とは客から共感を得ること。「それっていいね」と思ってもらうこと。価格やコストとパフォーマンス(客に提供するものや、客の満足度や喜び)の関係で価値が決まるとすれば、価格やコストを下げるのではなく、パフォーマンスを上げることで価値を創造していこうという取り組み。

社員の満足度アップのため、月1回以上の休館日設定や「わくわく手当」「ありがとう手当」の導入。社長主催の毎月の研修会も設定した。

新たな仕組みづくりでは、「客の動機づくり」に取り組む。売れない理由は不景気ではなく▽買う理由がないから▽知らないから▽良さが伝わっていないから―と考え、これらを解決する仕組みをつくろうとしている。

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