宿泊業界との新たな連携- JATA経営フォーラム、リアルAGTへ期待聞く
JATA(日本旅行業協会)はこのほど、東京・六本木アカデミーヒルズでJATA経営フォーラム2016を開いた。林文子・横浜市長の基調講演後に(1)航空会社との新たな連携のあり方と課題(2)宿泊業界との新たな連携のあり方と課題(3)女性の活躍で企業は強くなる(4)海外旅行の未来展望を語る 旅行会社の役割・存在意義とは―の4つの分科会を同時間帯に行った。このうち宿泊関連分科会はOTAが台頭するなか、リアルエージェントに対する宿泊施設の考える価値観と期待について掘り下げた。
同分科会は、進行役のJTBの今井敏行取締役旅行事業本部長が投げかける問いに、パネリストとして参加した山口敦史さん(山形県天童温泉・ほほえみの宿滝の湯)、根本芳彦さん(栃木県日光温泉・花衣の館日光千姫物語)、原洋平さん(神奈川県箱根湯本温泉・ホテルおかだ)の3氏が答える形で進められた。旅行業界からも吉金嘉洋さん(日本旅行常務執行役員営業企画本部副本部長)がパネリストに加わった。
宿泊施設はいずれも、旅行者にも人気で旅行会社が送客したい施設であり、代表の3氏も複数の旅行会社系のホテル旅館連盟で活動するなど、お互いが価値を認め合う関係にあることから、リアルエージェントに対するポジティブな意見が多かった。
3施設のエージェント比率はいずれも6割台。パネリストは「日帰りを加えると5割ほどに落ちる」「比率を半々くらいにしたい」「年ごとの比率に大きな変化はないが、中身はOTAにシフトしている」といった現状が紹介されたが、「リアルエージェントとは深い付き合いがしたい。ご送客いただくお客様は良質、高単価でリピート率も高い」「宴会場の利用を増やすため小グループを取りたいがセールスが難しい。収益率の高い8―20人規模の送客に期待している」などの期待が寄せられた。
OTAに対するリアルエージェントの価格競争力に関しても「ツアーパンフレットはなくてはならないツールだと思っています。これの制作費を考慮すれば、手数料が高くなるのは理解できる」「宿泊客からリアルとOTAによる販売価格の違いについての指摘はほとんどない」。
エージェント比率における3施設のOTAの比率は現在22―30%。今後の展開は「そこまでOTAを伸ばす必要はないし、今後、対面販売は伸びると思っている」「OTAを伸ばすのが目的ではなく、様々な販売チャネルで100%に近い稼働を目指すのが目的。リピーター比率が高いリアルをしっかり受けた方がいい」「今くらいのバランスがいい。リアルはリピートに強みがあり、手数料を下げるだけが大事なのではない」。
一方で、旅連活動には注文もついた。「宴会や付き合い旅行がわずらわしく、若者離れにつながっている」「エージェントと付き合っていれば集客できたのは過去の話。若者は販売チャネルより、商品力の強化に関心が強く、そうした活動に時間を使っている」「地元支店との付き合いが希薄になっている」。
提供する在庫や返室についても「アロットメントはやむを得ないが、本音は共有がいい。買い取りならありがたい」「本来、仕入はお金のやり取りが伴う言葉だが、そうなっていない。返室のタイミングも重要」など改善点が指摘された。