風景にストーリーを見つける NHK「ブラタモリ」チーフプロデューサー・相部任宏さん講演(1)
昨秋、大分県で開催された第10回日本ジオパーク全国大会2019おおいた大会。基調講演として、NHKの人気番組「ブラタモリ」のチーフプロデューサー相部任宏さんが「風景にストーリーを見つける」をテーマに話した。近年、地域観光の振興に重視されるストーリーに関して示唆に富む講演だった。数回に分けて紹介する。(本紙特派・門脇修二)
違和感を意外性で解決する
ブラタモリとは、タモリさんがその土地の謎を解き明かす、鹿児島であればなぜ明治維新の担い手になったのか? 田園調布であればなぜ有数な高級住宅街になったのかなど、日本全国の方が抱いている既成イメージに関連しているお題です。タモリさんには事前にはどこに行くくらいしか教えていない。案内人に誘導されながら手探り状態で自分で考えながら、その謎を解いていく。
それを知ったところで今すぐ役に立つことではありません。私の指向性として、教養をエンターテインメント化する番組づくりをずっとやってきました。そのために、私は視聴者の方に違和感を感じていただく、意外性を感じていただくということが一番大事なことではないかと感じています。
ブラタモリの場合は、風景を取っ掛かりにすることを考えた。どこにでもあり、何も考えずぼーっと見ている。ある意味油断して見ているのが風景です。誰もが疑問と感じていない風景にあえて違和感を提示する。それがブラタモリの出発点で、違和感を意外性で解決させる。そことそこが結び付くと思わなかった、という感じです。
そのため風景の謎を解き明かすためジャンルを問わず総動員して考えます。地質に触れるとき花崗岩が侵食されて…とか、凝灰岩が堆積して…という話で終わらせない。その先、そのことがいったい歴史学や地理学や建築学とどう関わっていくのか、他の領域との接点を大切に探し続ける。領域同士が離れていれば離れているほど、意外性があるのです。
例えるならプロレスのロープ技です。悪役をロープに投げる距離が長ければ長いほど待ち構えるラリアットの威力が増す、そこを一番大事にしています。
(続)
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