可能性を感じた兵庫県宍粟市 旅行会社招きモニター、森林鉄道の運転体験など高評価
兵庫県中西部に位置する宍粟(しそう)市は9月中旬、関西の中小旅行会社15人を招いてモニターツアーを実施した。市内の渓谷や森林、まち並みなどを視察し、ツアーとして成り立つ素材なのか意見を集約。受入態勢に課題はあるものの、参加した旅行会社からは可能性が大きいとの評価を得た。
宍粟市は滋賀県・琵琶湖とほぼ同じ面積を持ち、その90%が森林を占める中山間地域。1960年代までは木材伐採や炭焼きなど林業で栄えた。近年、兵庫県内で初めて「森林セラピー基地」として認定され、セラピーロードを設け、森林を活性化させるまちづくりに取り組んでいる。ちなみに、2019年の第4回全国難読市ランキングで全国第3位、西日本第1位に選ばれたという“輝かしい”実績も。
今回のモニターツアーでも森林資源をクローズアップ。かつて森林鉄道が走っていた赤西(あかさい)渓谷は、ハイカーから青森県十和田市の奥入瀬渓流に似ていると言われたりすることから「関西の奥入瀬渓流」と命名されている。参加者は、赤西渓谷沿いを歩き、赤西渓谷のシンボル的存在で樹齢400年の杉の大木「赤西の先代杉」を見学した。
旅行会社からは「渓谷を楽しむウオーキングとしてはいい」「関西の奥入瀬を名乗るのであれば、散策コースや遊歩道を整備すべき」という意見があった。
また、渓谷を縫うように走っていた森林鉄道は、フォレストステーション波賀の敷地内に地元有志が観光用に復活させた。富山県から列車を取り寄せ、線路も自分たちで敷いた手づくりだが本格的な鉄道だ。10月末には678㍍まで線路を延長させている。
参加者は運転席に座り約100㍍にわたり森林鉄道を運転。体験者には後日“運転仮免許証”が郵送された。旅行会社は運転前に森林鉄道遺構の紹介を聞き「林業で栄えた過去のストーリーを知ってから森林鉄道に乗るのは感慨深いものがあった」といった声や「自分で森林鉄道を運転できるところが珍しい」。
国見の森公園は、山麓と山頂を結ぶ全長1100㍍のミニモノレールがある。「思った以上に長い距離を乗車でき、ハイキングコースと合わせて使えそう」「モノレールが急こう配を登っていく体験はスリルがあり、景色も絶景だった」と旅行会社も高評価。
1泊2日のモニターツアーでは宍粟市の食も味わった。1日目の昼食は「播磨国風土記」に日本酒最古という記述がある日本酒発祥の地で、発酵食ランチを味わった。中国道・山崎インターに近く情緒ある建物が点在する酒蔵通りの老松ダイニングで提供され、旅行会社は「建物に趣きがあるうえ、健康的でボリュームがあって、女性グループに勧めやすい」。
また1日目の夕食は、宿泊先でもあったフォレストステーション波賀で、宍粟市の福元晶三市長も交えて、宍粟肉をはじめ宍粟の食材が提供された。食事に立ち会った生産者、宍粟牛を取り扱っている柴原精肉店の柴原政司社長の人柄は財産という意見をはじめ「脂の質がよく、柔らかくてとてもおいしい肉だった」と好評だった。
総じて旅行会社からの評価は高かったものの、視察した森林鉄道、ミニモノレールなどが無料で体験できることから「持続可能な観光のためにも有料にしなければ」と指摘する意見もあった。
宍粟市では今後、旅行会社から送客してもらえるよう受入態勢を整えていきたいとしている。
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