楽しく読めて ときどき役に立つ観光・旅行専門紙「トラベルニュースat」

北前船の力で能登復興 石川・福井でフォーラム

江戸から明治にかけて海運を担っていた北前船をテーマに寄港地連携、地域間交流での活性化を図る「北前船寄港地フォーラム」が昨年11月、石川県と福井県で相次いで開かれた。2024年元日に発生した能登半島地震を踏まえ、北前船交流拡大機構が北陸の自治体らに開催を提案して実現。北前船文化を生かした観光まちづくりやインバウンドの推進、北陸復興に向けた議論が行われた。

食文化、伝統工芸を支えた船

同フォーラムは、2007年から開始。35回目となる今回は「北前船寄港地フォーラムin加賀・福井」として開かれた。

加賀会場は11月22日、山代温泉のみやびの宿加賀百万石で開催、約380人が出席した。

冒頭、北前船日本遺産推進協議会会長で石川県加賀市の宮元陸市長が「加盟自治体がすべて参加し、約30人の首長が集った。我々の仲間である能登をどう支援するかのその一心だ」とあいさつ。北前船交流拡大機構副会長であり、元観光庁長官で東武トップツアーズの久保成人会長は「北陸復興に向けてが大目的。北陸新幹線の開業を機に太平洋側にも大動脈ができた。復興への道筋を作りたい」と述べた。

北前船寄港地フォーラム

全国から約380人が参加した加賀会場

3部構成で行われたフォーラムのうち、第2部は「石川県の復興支援に向けた取り組み」をテーマに、北前船文化の高付加価値化や、北陸復興に向けた観光の取り組みを考えるパネルディスカッションなどが行われた。

ファシリテーターの観光庁・長﨑敏志観光地域振興部長は石川の観光について「石川県全体の宿泊はコロナ前よりも良く、インバウンドについてはさらに良い状況だ。だが、金沢や加賀でなく、能登にフォーカスを当てなければ議論にならない」と能登の状況を踏まえながら議論することの大切さを訴えた。

全体を通じて、北前船文化を生かした観光まちづくりやインバウンドの推進、北陸復興に向けた議論が行われた後、日本旅行の小谷野悦光社長は「今後は、我々がいかに工夫できるかが問われる。能登の復興はもちろん、世界に向けて力を結集して進んでまいりたい」と総括した。

一方、福井会場は11月23日、福井市の福井県産業会館で開かれた。

「京都へ、そして世界へ―世界の和食を支える昆布、福井の伝統工芸」をテーマとしたスペシャルトークセッションでは、京都・祇園の老舗料亭「菊乃井」の村田吉弘社長が、和食が世界遺産となった秘話を話したほか、和食と昆布の関係性について言及。「昆布は北前船で福井県の敦賀に運ばれた後、京都に送られた。京料理をはじめとした和食文化の発展に貢献している」と話した。

北前船寄港地フォーラム

福井会場でのトークセッション

高級料亭などに昆布を提供する老舗昆布店「奥井海生堂」の四代目である奥井隆社長は、出汁を取る際の水の重要性を説きながら「水と北前船で運ばれた昆布が組み合わさることで、より和食文化の魅力が高まった」と強調した。

福井県の中村保博副知事は、和食に欠かせない刃物やはし、和紙などが福井県にはそろっていることを紹介しながら「和食文化は、北前船が地域をつないだように、地域交流が盛んになることで発展してきた。今後は世界に発信していく」と展望を述べた。

主催者あいさつとして福井県実行委員会会長で福井県の杉本達治知事が「能登半島地震からの復興に向けて、北陸新幹線の延伸開業を契機とし、北前船の文化を世界に発信する」とフォーラムの意義を伝えていた。

また、ANA総合研究所の㓛刀秀記社長は「全国横断的に首長が来場しているが、地域連携の結晶と言える。皆が力を合わせることは、北前船という日本遺産にさらに磨きがかかる」と、フォーラムを通じた人の和の拡大、関係人口の増加を目指す考えを示した。

なお、次回は長野県松本市で「北前船フォーラムin信州まつもと」として25年11月20日に開かれる予定。

この記事をシェアする
購読申し込み
今読まれているニュース
地旅
今すぐにでも出たくなる旅 最新
新幹線効果で賑わう・魅力充実北陸―福井編

2024年3月の北陸新幹線福井・敦賀延伸により新駅が開業した石川県加賀温泉郷や福井県あわら...

新幹線効果で賑わう・魅力充実北陸―石川編

2024年3月の北陸新幹線福井・敦賀延伸により新駅が開業した石川県加賀温泉郷や福井県あわら...

未来へつなぐ四国「おもてなし」の魂・愛媛編

「四国はひとつ」の旗頭のもとに4県がひとつになって観光振興を進める四国。その根幹は、四国八...

トラベルニュース社の出版物
トラベルニュースat

観光・旅行業界の今に迫る面白くてときどき役に立つ専門紙。月2回発行

大阪案内所要覧

旅行業務必携。大阪にある全国の出先案内所収録。24年版発売中!

旅行業者さく引

セールス必携。近畿エリア全登録旅行業者を掲載。22年版発売中!

夕陽と語らいの宿ネットワーク
まちづくり観光研究所
地旅
関西から文化力
トラベルニュースは
文化庁が提唱する
「関西元気文化圏」の
パートナーメディアです。
九観どっとねっと
ページ
トップへ