イベントありきから脱却-スポーツツーリズムの本質(2)
久保田さんがもう1つ地域へ勧めるのがノルディックウオーキング(NW)。ポールを使って歩くことで高齢者でも楽しめる。その好例が大阪府岬町。今年までの3年でコースの整備やイベント開催など「ウオーキングのまち岬町」を掲げるところまでになった。
スポーツの地域への定着 カギは「理解」
最初は教育面からの普及を図った。小学生の学童の時間に採用すると町教育課が「誰でも分け隔てなくできるスポーツ」と賛同。町役場で体験会を開くと多くの高齢者がやりたいと手を挙げ、町健康課に予算がつき、体験教室の設定に至った。
トントン拍子に見えるが、ここにも「地域の理解」というロジックがある。体験会に町内各地域の役員が参加し、やる気になってもらうことで「これはいいよ」という口コミの好転が始まる。町はポールを100本購入するも常に貸出し中で、地元のスポーツ店でポールを販売、地元ではイベント化されるなど盛り上がりを生む。
久保田さんは「想像以上」という成果の理由を「高齢化で疲弊している中、地元のものを生かしてという活動がはまった」と分析。コース設定に適した自然環境があり、ポール以外は特に必要ない。ビーチラグビーと同じで、地域への普及の仕組みとまちの熱意こそが必要というわけだ。
「あくまでスポーツで地域振興するという姿勢が重要。教育や高齢化にも対応できます」と強調する。地域への浸透も「商売っ気のない地元の有志グループができてくれば、その小さな核を集めてイベントをすれば規模は大きくなります。やはりまずは地域の理解」。
スポーツによる地域活性化のモデルづくりを進めるのと同時に、観光振興の現場を知る人間が必要との観点からスポーツ版観光地域振興コーディネーターという職域づくりの絵も描く。
「今はスポーツ側の視点だけという取り組みが多い。地域主導でスポーツの地域での価値を高め、観光素材として活用した上で、旅行会社などが賞品としての価値を高めて収益性を上げるというのが本来のモデルだと思うんです」
地域に経済効果をもたらす仕組みも研究しながら「興味があればぜひ相談してほしい」と呼びかけている。
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