大分県日田市・逆境こそ地域力を発揮(1) 湯あみ着、テントバー―天ヶ瀬温泉の取り組み
昨夏の豪雨で、JR久大線の鉄橋流出など被害を受けた大分県日田市。一昨年の地震に続くダブルパンチだが、このまちには逆境に立ち向かう熱い人たちがいた。目的地として選ばれる地域づくりに取り組み、今年7月中旬のJR復旧による完全復興の大号砲を待つ。
「誰もが温泉を楽しんでもらえるように」 温泉街の“たまり場”も
日田市西部に位置する天ヶ瀬温泉。別府、由布院と並ぶ豊後三大温泉の一つで、温泉街の中央を流れる玖珠川沿いに5つが点在するかけ流しの露天風呂川湯が名物。泉質も美肌効果や酸化防止など、女性が好む効能であることが最近の調査でわかった。
と言っても、開放感満天の川湯は、女性にはハードルが高い。そこで温泉旅館組合、日田市観光協会天瀬支部では昨年8月から「湯あみ着」の販売をスタート。日帰り入浴の増加などの効果が見られたことから、今年3月からはレンタルも開始。湯あみ着レンタルは15施設中10軒の旅館で行い、そのうち5軒は大浴場でも使用できる。露天風呂も2カ所がOKだ。
日田市観光協会事務局長の木下周さんは「誰もが温泉を楽しんでいただけるように地域で取り組んでいます。2019年のラグビーW杯では福岡市、大分市、熊本市が試合会場で、外国人も多く来ることが予想されます。外国の方にも天ヶ瀬温泉の入浴を体験いただく絶好の機会。湯あみ着が温泉街のスタンダードになれば」と話す。レンタル湯あみ着は、日帰り客には300―500円で、宿泊客には無償で貸し出す施設もある。
天ヶ瀬温泉のもう一つの話題は「テントバー」。天瀬町地域おこし協力隊の近藤真平さんが、旅館組合の阿部信明組合長らとともに昨年1月に開設した。
温泉街の賑わいをつくろうと、博多の屋台をイメージして準備を始めた近藤さんだったが、旅館組合や地元メンバーから「天瀬の冬をなめてる」と一蹴された。ならばと考えたのが、アウトドアメーカー・スノーピークの本格的なテント。河原のスペースに2張を組み合わせ、備品もおしゃれなアウトドアグッズでそろえた。「観光客向けのつもりが5割が温泉街の知り合い、3割が日田市内から来た人です」。それでも営業日には1日平均35人も来た。
韓国人など外国人宿泊客も訪れるようになり「地元の人と、地酒、地のもんの肴で盛り上がっています」と近藤さん。この春には「テントバー」の商標登録も行い、各地に広めることも考えている。組合長の阿部さんは「イケメンの近藤さんに、若者の感性でやってもらったのが良かった」と笑う。温泉街のたまり場として今夜も住民と観光客が盛り上がっているはずだ。
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