災害時対応に使命感 山形県旅館組合が創立60周年(4) 千年に一度の学びの場として―シンポから
南三陸ホテル観洋女将・阿部憲子さん
創業者の経験を踏まえ、建物は地震に備えて固い岩盤に建設してありました。震災で1―2階は津波を被りましたが、建物が無事だったこともあり、震災当日から地域の住民の方々が続々とホテルに避難して来られました。
スタッフにはお客さまと住民を最優先に対応することを伝えました。泣き崩れる女性スタッフもおり「心を強く持って」と何度も繰り返しました。そう声をかけながら、私自身、いろんな人の安否を思い続けていました。
地震当日に350人、翌日には600人を受け入れていました。みなさんには「譲り合いの精神で乗り越えましょう」と話しました。震災から電気は2カ月、水道は4カ月止まり、とても大変でした。ただ、大変さの一方で、食のストックがあり、住を提供できる旅館業には、震災時に役割があることも実感していました。

東日本大震災発生時の受入
など体験を語る阿部さん
1カ月後にレストランを再開しました。まだ、水道が復旧する前です。実は、そのころになると廃業を決めた取引業者が出てきました。ただ、レストランを再開するからと、食材の納入をお願いすると、応えてくれる取引先もありました。地域の酒屋さん、魚屋さんなどが商売を再開してくれました。私たちは1つのホテルに過ぎないけれど、稼働することで地域の役に立てることがあると、旅館業の裾野の広さを実感しました。
避難生活が長引くにつれて、子どもの教育を心配する親たちの声が出てきました。そこでホテルに寺子屋を開きました。学生や大人たちがボランティアで、子どもたちに勉強を教えました。子どもの伸びる姿は被災地の力になりました。今もそろばん教室を続けています。寺子屋だけでなく、避難所を新たなコミュニティの始まりとして、いろいろなイベントも開催しました。今は震災の語り部活動を続けています。
今言えるのは、千年に一度の災害は、千年に一度の学びの場だということです。百聞は一見にしかずです。どうぞ東北にお出かけくださいませ。
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