旅行業の近未来予想図 鹿児島県協会・組合が問う「2030年の旅行業」(2) 人流を司る知的組織の設立を
鹿児島県の旅行業協会と旅行業協同組合が開催した勉強会。これからの旅行業について活発な意見が交された。熊本県旅行業協同組合の赤司大介副理事長の冒頭発言、高崎経済大学の井門隆夫准教授による問題提起、鹿児島の中間幹夫会長兼理事長も加わったパネルディスカッションが行われた。
パネルディスカッション 旅行業界の中でもNPOを
―「これからの旅行業界のあり方について」について、現在の取り組みを踏まえて、それぞれお話を伺いたい。
赤司 「旅行業の近未来予想図 鹿児島県協会・組合が問う「2030年の旅行業」(3) 熊本地震後の旅行業協同組合」参照
中間 12年前から着地型旅行で地域活性化に貢献し、会員の利益享受につなげることに取り組んできました。ただボランティア活動だけでは立ち行かず、経済的な合理性を問うと現実路線に舵を切らざるを得ません。その中で、来年開催する全国障害者スポーツ大会を日本旅行と共同で受注できました。参加者8千名の大きな大会です。
日本旅行の財政力や信用力、鹿児島県内の人脈など地域に密着している我々のいい面を互いにプラスして受注できたと思います。市場が縮小している中で、一部大手が寡占化しているところに風穴を開けていかなければなりません。組合員、会員の協力、理解を得て、組合の自己満足ではなく会員が利益を享受できることを詰めていきます。

中間 幹夫さん
鹿児島県旅行業協会会長
鹿児島県旅行業協同組合理事長
井門 今の旅行業はずいぶん様変わりをして、単なる旅行手配や企画をするのではなく、上流に遡り一体となって地域づくりに関わらないと生きる道はありません。逆に言うと、地域に関わり人が住んでいれば、旅行業の未来はある。課題は、その地域がどんどん過疎化していくこと。どう維持していくかが、旅行業に課せられていることだと思います(「旅行業の近未来予想図 鹿児島県協会・組合が問う「2030年の旅行業」(4) 人口減、低成長時代への問題提起」参照)。
中間 インバウンド一辺倒の行政からアウトバウンドも活性化し、対外的にウインウインの関係をつくっていかなければなりません。我々にとってもアウトバウンドが大きな市場です。今後、1社で世の中を動かす時代は過ぎ、知識人や団体、若い人たちが知的NPOという塊をつくり、社会や政治を問う。そうしないと世の中は動かないし、観光が基幹産業にならないのではないか。旅行業界の中でもNPOを形成していくべきではないかと思っています。
井門 観光=レジャーではありません。旅行業はMICEも修学旅行も人の流れすべてを扱う「人流産業」です。言われたことを代理して手配するのではなく、その人の夢、願い、仕事、人生のあり方を移動ということではすべて支えてあげるアドバイザーにならなければなりません。そしてアドバイザーとして定額課金をする。その対象となるお客様のデータベースをどれだけ抱えているかが、旅行業のベースになります。そのためにはデジタル発想で、商圏を無限大にする。外国人のファムツアーでよく言われる「禁煙のスナック」は、貸切でやればいいという知恵。旅行業がいつまでも水商売と言われるのは癪なので、旅行業で入ってきた現金を投資し、利益率の高い2つの業種を組み合わせる発想―つまり古い観光からいかに脱却するかです。
赤司 旅のことなら任せてくださいという立場になりたいと思っています。地域との間にいるのが我々の利点です。
中間 トリップ全旅は手段です。その後、我々がどうコーディネートするかがポイントです。海外ではなかなか見られないところをコーディネートすることで高収入を得ている方もいます。トリップ全旅を利用した後、我々がどう創造していくかが大事ではないでしょうか。
(進行・トラベルニュースat本紙編集長富本一幸)
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