新型コロナウイルスと観光業界 特別寄稿・松坂健さん「『禍』転じて今、我々がすべきこと」(1) “あのころ”の対策検証を
すでにかなりの意見が出ていて、いまさら発言するのは屋上屋を架すみたいなところがあるのだけれど、せっかく紙面をご提供いただくので、少し勝手なことを書かせていただきたいと思う。
「コロナ禍」というけれど、僕には天から降ってきた運命的な禍いというのではなく「禍にしてしまった」という感じがある。
初期の豪華クルーズ船での発症騒ぎの対応から、緊急事態宣言、ある種の都市ロックダウンまでの経緯に問題点はなかったか、の検証がどうしても必要だと思う。
割に早くからウイルス対策にはマスク着用、1・5メートル離れるソーシャルディスタンス、大声で喋りあわない、うがい、手洗いの励行などが有効だと言われ、これを厳密に守っていれば、かなり流行は抑えられたのではないかと思う。
政府は、一般国民にはこのことを知らしめるべく頑張っていた節もあるけれど、僕としては小売業や外食産業、宿泊業といったサービスなどお客さんが生で接触する現場のコロナまん延防止対策がもっと必要だったのではないだろうかと思う。
具体的には、ごく初期段階でサービス業関連の人たちをきめ細かく招いて、当たり前の「対策」を説明し徹底させる。このとき、同時に国民全般に対し、現場のスタッフの皆さんが大きな声で語り合っていたり、マスクを着用していなければ、積極的に注意することもあるよ、と知らしめたりすればよかった。そして、もしもコロナ対策でアクリルのシールドやパーテーションなどが必要なら補助金を出すとか、も大事な措置だった。
いきなりロックダウンで店舗営業中止では傷が深すぎた。
ともあれ、4、5月、6と3カ月分の売上は永遠に戻らない。万が一、コロナの第何波がきて、またもや同じ事態になったら、もはや業界は立ち直れないだろう。だからこそ、プリンセスクルーズからの3カ月の事態推移の徹底検証が必要だし、観光業界もそういうことを厳しく観光庁を含め関係筋に要求していってほしい。
(松坂健=元跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授)
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