【観光業界リーダー年頭所感】日本商工会議所 会頭 三村明夫 氏
新春にあたり謹んでごあいさつ申しあげます。
昨年1月にわが国で初めての新型コロナウイルス感染者が報告されてから、早や1年が経とうとしています。コロナ禍にあっても、今なお必死に経営努力を続けておられる皆様に深く敬意を表するとともに、われわれ全国515の商工会議所は、今年も一丸となって事業者の皆様と地域経済の発展のために力を尽くしてまいります。
さて、わが国の観光産業はコロナ禍により、年間4千万人の目標達成に向けて順調に伸びていたインバウンドはもとより国内旅行・観光需要も蒸発し、極めて厳しい経営状況に直面しています。昨年7月に開始された「Go Toキャンペーン事業」の効果もあり、一旦、観光消費が持ち直しの動きをみせたものの、秋以降の第三波と言える感染急拡大により、業況は再び予断を許さない状況となりました。
当所では昨年11月、厳しい経営環境に置かれている観光関連事業者の皆様に対する金融支援や雇用調整助成金特例措置の継続、Go Toキャンペーンの延長、地域間・事業者間における施策効果の格差是正などを当面の柱とする提言をとりまとめ、政府など関係各方面に強く要望いたしました。Go Toキャンペーンについては、年度に拘らずコロナ問題の収束が見込まれるまでの延長と必要な予算の拡充に加え、特にトラベル事業において需要の回復が遅れている地域・事業者への配慮や平日への旅行分散化などが、年末の政府の追加経済対策で実現いたしました。
私たちは引き続き、感染拡大防止と社会経済活動の両立が求められる困難な状況に直面していますが、このような中でも、各地では新たな旅行・観光の需要喚起や受入れ体制整備など前向きな動きが見られます。バーチャル観光を通じたプロモーションによるリアルな旅行需要の開拓、三密回避も売りとなるアウトドアや農泊などグリーンツーリズムの開発、働き方改革にも沿ったワーケーションやブレジャーへの取り組みなどであります。こうした観光誘客の取り組みとともに、頻発する自然災害や感染症などの危機においても事業継続を可能とする危機管理体制の強化もますます重要になっています。
本年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されており、インバウンドの再拡大に向けた大きな弾みとなることが期待されます。上記提言でも求めている通り、訪日外国人に対する日本の衛生習慣の理解促進や観光事業者が取り組む感染防止対策への支援を通じて、万全な態勢のもと日本ならではの安全・安心をアピールすることで観光を再び盛り上げる契機にしていきたいと考えております。
結びに、本年がわが国の観光の明るい未来を切り拓く再スタートの1年となりますことを心より祈念いたしまして年頭のあいさつといたします。
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