【観光業界リーダー年頭所感】国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所 代表 本保芳明 氏
新年あけましておめでとうございます。
昨年来の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、世界的規模で移動制限が実施されるなど観光に大きな打撃を与え続けています。日本を含めた世界各国において持続的な観光に向けた取り組みが進展しつつある中において起きた世界的災禍ですが、安心安全の観点から、また、かつてのオーバーツーリズムなどの観光課題への反省からも、ますます地域と住民に寄り添う形で持続可能な観光を「ニュー・ノーマル」として回復を目指していくことが国際的な潮流となっています。
弊所の組織体制に関する大きな変化としては、昨年7月、「専門機関の特権及び免除に関する条約の付属書ⅩⅧ」が発効し、駐日事務所に法人格が付与されるなど、組織体制やUNWTO本部との連携が強化されたことが挙げられます。
これを受けて、我が国を含むアジア太平洋地域において持続可能な観光をより一層推進するため、弊所を支援するアジア太平洋観光交流センター内に「APTECサスティナブルツーリズム推進センター」を設立しました。
本年も、これまで以上に国内外の関係者と連携し、「持続可能な観光地域経営」「観光危機管理」「自治体等の関心の高いテーマ型観光の推進」を重点に活動を進めてまいりたいと考えています。
具体的には、観光指標を活用したエビデンス・ベースの持続可能な観光地域経営に向けた取り組みとして、UNWTOではInternational Network of Sustainable Tourism Observatory(INSTO:持続可能な観光地域経営推進国際ネットワーク)を推進し観光指標の計測・評価・分析を通じて世界の観光地の政策形成を支援しています。
昨年は運輸総合研究所と共同して、国内外の地域の先進事例を調査・分析し、地方自治体などを対象とした手引書の作成に向けた取り組みを実施しており、12月に「持続可能な観光地域経営の推進に関するシンポジウム」を東京で開催しました。
ウィズコロナあるいはポストコロナを見据え、観光が持続的に力強く成長するため、エビデンスに基づく持続可能な観光地域経営の普及促進を図っていきたいと考えています。
また、観光危機管理の取り組みを推進するため、国内外の先行事例を収集し、我が国のみならず世界の自治体などが観光危機管理に関する取り組みを体系的に導入するための手引書を作成します。この成果物を活用し、今年2月に日本およびアジア太平洋各国を対象としたウェビナーを実施する予定です。
さらに、テーマ型観光の推進については、一例としてガストロノミーツーリズムがあります。地域文化の発信、地域経済の発展、持続的な観光を促進し、関係者間のネットワーク形成などを目的とし、UNWTOは毎年「ガストロノミーツーリズム世界フォーラム」を開催しています。
2022年の国内開催候補地である奈良県と共催で、誘致に向けた機運醸成のため、12月にガストロノミーツーリズム国際シンポジウム2020を開催しました。本年も引き続き観光庁や奈良県と連携し、同フォーラム誘致に向け活動していく所存です。
これらのほかにも、持続可能な観光の促進に向けて、UNWTO駐日事務所では、さまざまな事業に取り組んでまいりますので、皆様方の暖かいご支援を賜わりますようお願い申しあげて年頭のごあいさつといたします。
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