【観光業界リーダー年頭所感】公益社団法人日本バス協会 会長 三澤憲一 氏
新年あけましておめでとうございます。本年が皆様にとりまして実り多き年になりますよう心よりお祈り申しあげます。
昨年を振り返りますと、終始、新型コロナウイルスへの対応に追われた一年でありました。バス業界も多大な影響を受け、未曽有の危機的な経営状況に陥っております。このような事態に対しまして関係の皆様のご尽力により雇用調整助成金の特例措置、金融支援措置の拡充、感染予防対策に係る補助金などの充実、そしてGo Toトラベル事業の実施など様々な対応を講じていただきましたことに心より感謝申しあげる次第です。
乗合バス事業につきましては、大都市部はここ数年堅調に推移しておりましたが、コロナ禍により平成24年度以来の赤字となり、地方部においてはコロナ禍以前から過疎化の進展などにより厳しい状況が続いており、バス路線の維持が大きな課題となっております。
貸切バス事業につきましては、軽井沢の事故を受けて、安全対策の強化に取り組んでおり、また、安全コストを含んだ新運賃・料金制度の下で、経営基盤の健全化が進んでおりましたが、こちらもコロナ禍により需要のほとんどを消失している状況にあります。
新型コロナウイルスはいまだ収束の兆しが見えませんが、会員事業者は、感染症対策として、日本バス協会が策定した感染予防対策ガイドラインに基づき、乗務員の体調管理、車内消毒、車内換気などの感染予防対策に努め、早期の需要回復を期待しつつ、利用者の皆様にいつでも安心してご利用いただける環境を整えております。
一方で会員事業者の皆様には、毀損した財務体質の改善と再建策が喫緊の課題と思われます。また、新型コロナウイルスによる新しい生活様式への対応については、利用者の行動変容を把握、推定し、デジタルトランスフォーメーション(DX)と言われる様々なツールを利用した事業の一層の効率化と生産性向上などの経営努力が期待されます。それでも困難な状況を克服するため、予算・税制について引き続き取り組んでまいります。その上で利用者にご負担を求めることも今後の検討課題と考えております。
さて、バス事業が抱える課題として運転者不足が挙げられます。日本バス協会では昨年から厚生労働省の「就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業」を受託しバス運転者就職サポート事業を実施しております。また、警察庁による大型第二種免許の取得要件の緩和も、遅くとも令和4年6月までに施行することとなっておりますが、早期施行に向け関係省庁と協力してまいります。さらに外国人労働者の雇用についてもより一層研究を重ねる必要があります。今後においては、働き方改革の流れの中で、令和6年度からは運転者の時間外労働の上限が規制されます。関係各省のご指導を賜りながら着実に対応してまいりたいと考えております。
また、究極の運転者不足対策と期待される自動運転につきましては、国の共同事業として、バス事業者が参画する実証実験が進められております。各事業者がそれぞれ積極的に取り組むことはもちろんのこと、日本バス協会としましても引き続き自動運転に係る事業の動勢を注視しつつ、早期実用化に向けて取り組んでまいります。
本年は、延期となっていた東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定となっております。選手、マスコミなどの関係者輸送と、観客の輸送について、貸切バス、乗合バスが大きな役割を果たすことが期待されております。大会組織委員会と連携をしながら、円滑な輸送が行われるように万全の準備を進めてまいります。
バス事業の根幹は安全の確保であります。現在、日本バス協会が策定した「バス事業における総合安全プラン2020」に基づき、死亡事故ゼロを目指して取り組んでおりますが、本年3月策定予定の次期総合安全プランに基づき、引き続き会員事業者の皆様とともに事故防止対策にしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。
コロナ禍の真っ只中ではありますが、会員事業者の力をさらに結集して安全・安心な輸送サービスの提供に努め、バス事業の発展を目指してまいりたいと存じます。皆様のご理解、ご協力を重ねてお願い申しあげます。皆様のご健勝とご発展を祈念して年頭のあいさつとさせていただきます。
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