【観光業界リーダー年頭所感】九州旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 青柳俊彦 氏
謹んで新年のお慶びを申しあげます。平素より、JR九州グループに対しまして多大なるご支援をいただき、厚く御礼申しあげます。
昨年は、「JR九州グループ中期経営計画2019︱2021〜次の『成長ステージ』に向けて〜」の中間年として飛躍を目指す年という位置づけでしたが、年明けからの新型コロナウイルスの感染拡大により、鉄道事業をはじめとした各事業が移動需要の減少および個人消費の低迷などの影響を強く受けました。これに加え、「令和2年7月豪雨」による被災など、当社にとって苦境の一年となりました。
このような状況のなか、安全を確保しながら交通ネットワークの維持に努めるとともに、移動需要の減少を踏まえた運行本数の削減、資金調達による手元資金の確保、従業員の一時帰休を含めたコスト削減、投資計画の見直しなどの対策を講じてきました。また、各事業において感染拡大防止策を徹底するとともに、収益の確保に向けた施策に取り組みました。
鉄道事業においては、約3年半ぶりの投入となる新D&S列車「36ぷらす3」の運行を開始したほか、関連事業においては、11月に「アミュプラザみやざき」を全面開業しました。
本年は、厳しい経営環境を克服し、会社を再び成長軌道に乗せるための改革の年と位置付けております。新型コロナウイルスは人々の価値観や生活様式に大きな変化をもたらしました。仮に収束したとしても、当社を取り巻く事業環境は以前のようには戻らないと考えています。このような見通しを踏まえ、以下の3点を最重要課題として取り組みます。
まず1点目は、デジタルトランスフォーメーションなども活用した業務の改革です。鉄道の長い歴史のなかで形骸化した制度や業務がないか、あるいは標準化によりコストを落とせないか、見直しを行います。コロナとの戦いが長期戦になった場合でも事業を継続できるようなスリムな体に会社を作り変えることを目指します。
2点目は、事業モデルの転換です。当社グループは従来、鉄道や駅ビル、ホテルなどが相互に送客し合い好循環を生んでいましたが、コロナ禍においてはそのサイクルが逆転する状況になりました。駅を中心に沿線価値を高めていく戦略に変わりはありませんが、各事業が駅という好立地に頼りきりになるのではなく、環境変化への適応力を高めていく必要があります。
3点目は、地域を元気にする取り組みの継続です。非接触、リモート化が進んだとしても、リアルでしか体験できないことを求める気持ちは一層強くなっていくはずです。「36ぷらす3」をはじめとしたD&S列車など、鉄道や旅先の現地でしか味わえない体験ができるような取り組みを今後も積み重ねていきます。
4月には「アミュプラザくまもと」の開業を控えていますが、こういった賑わいの創出や地域の魅力の発信を通じて九州の発展に貢献していきたいと考えています。そして、JR九州グループの“あるべき姿”である「安全とサービスを基盤として九州、日本、そしてアジアの元気をつくる企業グループ」の実現に向けて、挑戦を続けてまいります。
皆さまの益々のご健勝とご発展を心よりお祈り申しあげ、新年のごあいさつとさせていただきます。
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