【観光業界リーダー年頭所感】国土交通省近畿運輸局 局長 金井昭彦 氏
新年あけましておめでとうございます。年頭にあたり、謹んでごあいさつを申しあげます。
新型コロナウイルスの感染が国内で報告されてから早いもので2年弱を要しておりますが、いまだ感染は終息せず昨年はその対応に明け暮れた1年となりました。また、年末に入り新たな変異株の感染も報告されており、近畿運輸局としては状況に応じた社会作りに取り組む必要があると考えております。
特に関西では他地域と比べ、インバウンドの恩恵を受けて経済が活性化していましたが、インバウンドが消失したために、交通事業者も苦境に立たされており、観光需要の回復が非常に重要だと認識しております。本稿をご覧いただいている皆様の多くは、いまだ厳しい経営環境にあると思いますが、政府による支援などを最大限にご活用いただき、今の困難な状況を乗り越えていただきたいと存じます。
新年にあたり、運輸・観光行政に関し、近畿運輸局として「新型コロナウイルス感染症対策」「観光政策への取り組み」「安全・安心の確保や環境・バリアフリー対策の実施」「公共交通の整備・維持確保」の4つの柱を中心に進めてまいります。
新型コロナウイルス感染症対策は、これまでも政府として業種横断的に雇用調整助成金、持続化給付金、金融機関を通じた実質無利子となる資金繰り支援などを実施してきたところです。国土交通省としても補正予算を活用した感染防止対策をはじめ、実証運行(航)に対する補助、交通事業者が観光事業者などと連携し、観光拠点を再生し、地域全体で魅力と収益力を高める事業に対する支援、各種法令の弾力的運用などを通じた支援などを行ってまいりました。さらに地方創生臨時交付金が公共交通や観光への支援に活用されるよう、運輸局からも地方自治体に様々な場面で要請を行ってまいりました。
加えて昨年11月に新たな経済対策「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が策定され昨年の補正予算および本年度予算を通じて具体化されることとなります。
地方創生臨時交付金についても新たに所要額が措置されております。近畿運輸局としても、事業者団体などと連携しながら公共交通などの支援への活用に関する、地方自治体への要請活動を継続してまいります。
観光政策への取り組みは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、我が国を含む各国において、海外渡航の制限や外出禁止措置が取られたことなどから、関西を訪れる旅行者、特にインバウンドによる入国者は大幅に減少しました。
現時点でコロナの終息時期はまだ見通せない状況ではありますが、「観光需要喚起策」「万博に向けたインバウンドの受入準備」など来たる旅行者回復の時期を見据え、近畿運輸局では様々な取り組みを行ってまいります。
今後の観光需要喚起策について、全国規模でのGo Toトラベル事業は現在のところ中断しておりますが、その間の観光需要喚起策として、地域観光事業支援による県民割(県内旅行割引)への支援を行っており、昨年11月からは利用できる範囲を隣県へ拡大し、支援期間についても3月10日まで延長することとなりました。今後は感染状況を十分に確認しながら、支援対象範囲を近隣圏域(地域ブロック)へ拡大することを検討してまいります。
また、新たなGo Toトラベル事業につきましては、今後年末年始の感染状況などをあらためて精査し、専門家のご意見を伺いながら具体的な再開時期を検討することとしております。再開にあたりましては中小事業者への配慮、旅行需要の平日への分散、地方への観光を支援するための配慮、ソフトランディング措置といった視点から制度を見直したうえで、ゴールデンウイーク前までは国の事業として実施することとしており、その後、ゴールデンウイーク後から夏期繁忙期までを念頭に、各地域の観光を巡る状況に柔軟に対応できるよう、都道府県による事業に変更することとしております。
感染拡大防止と日常生活の両立を図っていくため、飲食などの各分野で「ワクチン・検査パッケージ」を導入することとされています。観光分野においても、その導入に向けて昨年10月から技術実証を行い、近畿運輸局管内では4件のツアーと12カ所の宿泊施設において検証が行われました。これらの結果を踏まえ、観光庁では旅行業・宿泊業の現場における具体的な運用方法を定めたガイドラインを策定し、活用を促しているところです。
安全・安心に旅行をしていただくためには基本的な感染防止対策の徹底が重要であると考えております。このため、旅行者の皆さまに留意していただきたい事項をまとめた「新しい旅のエチケット」について、最新の状況を踏まえて改訂しました。旅行者の皆さまにこうした「新しい旅のエチケット」を遵守いただけるよう、観光・交通事業者のご協力もいただきながら周知を図ってまいりたいと考えております。
大阪市此花区の夢洲において、2025年4月から約半年間にわたり、国際博覧会(大阪・関西万博)が開催されます。来場者数は約2820万人と想定されており、この国際イベントを契機として、関西に国内外からの注目と人が集まることに期待がされます。
関西にとってはインバウンド復活の起爆剤としての期待は大きく、万博に向けた誘客プロモーション、来場された方の関西各地への周遊観光の促進について、取り組んでまいります。
また、広域的なMaaSの活用による効果は大きいと期待されており、交通・観光分野をはじめとする幅広い業種間において連携し、MaaSの取り組みを協同で実施していくという目的で、鉄道・バスなどの交通関係団体をはじめ、関西経済連合会などの経済団体、大阪府・大阪市にもご参画いただき、「関西MaaS推進連絡会議」を昨年設置しました。本年も議論を深め、利便性の高いMaaSの実現を目指してまいります。
さらに、近畿運輸局では、近畿地方整備局、関西観光本部と一層の連携を図り、大阪・関西万博開催を観光再生の好機と捉え、国内外の集客力を高めるための取り組みを強力に推進し、関西の発展に寄与してまいりたいと考えています。
以上、新しい年を迎え、所信を申し述べました。まずは新型コロナウイルス感染症の一日も早い収束と、大きな影響を受けた皆様の生活や経済活動を復活させるべく、本年も全力を挙げて各種取り組みを進めてまいります。さらに、大阪・関西万博の開催に向けた準備への支援や交通・観光行政を通じた関西の発展と皆様の豊かで快適な生活の実現に貢献してまいりたいと考えています。
今後とも当局の行政に対し、皆様方の一層のご支援、ご協力をいただきますよう心からお願い申しあげ、新年のあいさつとさせていただきます。
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