【観光業界リーダー年頭所感】国土交通省近畿運輸局 局長 金井昭彦 氏
新年あけましておめでとうございます。年頭にあたり、謹んでごあいさつを申しあげます。
関西では、これまで観光需要、特にインバウンド需要が旺盛でしたが3年近くにもおよぶ新型コロナウイルス感染症の影響を受け、地域経済を支える交通・観光産業は大きな打撃を受けました。
こうしたなか、昨年10月には、政府による水際対策の大幅な緩和とともに、全国旅行支援が実施され、さらに、新たな総合経済対策として、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」が閣議決定されました。
交通・観光・物流産業が関西経済の回復・活性化に果たす役割は大きく、当局としましては、総合経済対策に掲げられた施策を着実に実行するとともに、2025年大阪・関西万博の開催に向けて、インバウンドを始めとした観光需要を取り戻すため、関係機関と緊密に連携・協働しつつ、観光政策・交通政策を一体的に推進いたします。
また、交通・観光・物流関係事業者の事業活動を支えるため、引き続き各種支援制度の周知徹底を始めとした総合的な支援を講じてまいります。
新年にあたり、交通・観光・物流に関して、近畿運輸局では「2025年大阪・関西万博に向けた観光政策と交通政策の一体的な推進」「公共交通の整備・維持確保」「生産性の向上・人材の確保等・環境対策の実施」「安全・安心の確保やバリアフリー対策の実施」の4つの柱を中心に進めてまいります。
観光産業につきましては、昨年10月11日に全国旅行支援が開始され、入国者数の上限撤廃・個人旅行やビザなし渡航についても解禁となり、ようやくインバウンド観光が本格的に再開されたため、関西においても、本格的な人流の回復が期待されたところです。
同月には、政府による「インバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージ」が決定され、今後は、新たな「観光立国推進基本計画」の策定等、インバウンド消費5兆円超の速やかな達成を目指すための集中的な取り組みが展開されます。当局では、これらの政策の方向性を踏まえ、ウィズコロナ下における世界的な旅行需要の回復を見据えつつ、2025年大阪・関西万博の開催に向けた取り組みを全力で推進しているところです。
具体的には、観光政策と交通政策を一体的かつ強力に推進するため、令和4年6月に、近畿地方整備局・関西観光本部とともに「大阪・関西万博に向けた関西観光アクションプラン」を策定・公表しました。このアクションプランでは、大阪・関西万博を最大の好機と捉え、関西の魅力ある地域資源のポテンシャルが最大限発揮されるよう、「テーマとストーリーで地域をつなげる」「人材で地域をつなげる」「情報で地域をつなげる」の3つの視点で地域をつなげ、「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりを目指すことを目的として、国が実施・支援する取り組みの方向性と重点的に取り組む事業を取りまとめています。
同年12月には、このアクションプランを改訂し、大阪・関西万博に向けて、関西全体をパビリオン化することにより、万博来場者の関西周遊を促進する取り組みの推進、地域性を活かしたコンテンツ造成や観光の高付加価値化の取組みを推進することなどを盛り込みました。万博まで残り2年3カ月程度となる中、取り組みの具体化に向けて、検討を加速化させてまいります。
さらに、3つの視点のうち、「情報で地域をつなげる」に関しては、関西一円という広域的なエリアをターゲットにシームレスな移動手段の提供を目的として「関西MaaS」の取り組みを盛り込んでいるところです。「関西MaaS」が実現すれば我が国最大の規模になるばかりではなく、世界でも例を見ないようなものになるのではないかと考えております。
また、「関西MaaS」の取り組みを推進し、観光・交通分野を始めとする幅広い業種間での連携を促進する目的で当局が主導し、令和3年12月に、官民による会議体「関西MaaS推進連絡会議」が設置され、令和4年11月には、第2回推進連絡会議が開催されました。
第2回推進連絡会議では、・関西MaaSアプリについて、2023年夏に第1弾のリリースを予定していること・関西MaaSのサービス構築や運営を担い、会員の拡大と外部事業者などとの連携を担うオープンな組織として「関西MaaS協議会」を設立すること等が発表されたところ、この関西MaaSを軸に交通政策と観光政策を一体的に進めることで、関西全体の周遊性を向上させ、関西経済の活性化につなげたいと考えております。
このほか、万博に向け、会場内ビークルや会場アクセスバスについて電動車の活用を拡大し、移動のゼロエミッション化に向けた取り組みが進められており、当局としても地域交通のグリーン化事業等を通じて、この取り組みを推進してまいります。
昨年10月に交付された「大阪・関西万博特別仕様ナンバープレート」については、大阪・関西万博の開催に向けた機運を醸成するため、引き続き、普及に取り組んでまいります。
大阪・関西万博は、関西全体に国内外からの注目と消費支出がもたらす経済効果が期待されますが、当局におきましては、万博に向けた観光政策・交通政策を強力に進め、万博来場者による賑わいを、大阪から関西全域の賑わいへとつなげ、さらに全国へと広げることで、関西から観光立国の復活に貢献するとともに、万博に向けた誘客プロモーションや万博来場者の関西周遊の促進に向けた取り組みにまい進いたします。
以上新しい年を迎え、所信を申し述べました。ウィズコロナの下、政府の方針や政策の方向性を踏まえ、「関西経済の本格的な回復・好循環」に向けた施策を着実に推進し、国民生活の向上と関西の発展に貢献してまいりたいと考えています。
本年も、当局の行政の推進に関し、皆様方からのご支援ご協力を賜りますよう、心からお願い申しあげ、新年のあいさつとさせていただきます。
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