【観光業界リーダー年頭所感】公益社団法人国際観光施設協会 会長 鈴木裕 氏
あけましておめでとうございます。
さて、唐突ですが、生命の定義についてエポックメーキングな解釈があります。物事は放っておくと乱雑、無秩序、複雑な方向に向かい、自発的に元に戻ることはない。たとえば、コーヒーにミルクを入れると自然に混ざるが、勝手に別れることはない。熱湯は冷めるが、勝手に熱くなることはない。という熱力学の法則がありますが、ショッキングなのは生命とはその法則に抗って自然に先回りして生存している状態のことをいうとの説です。放っておくと壊れていく、つまり老化していく状況に、先回りして自分で自分を壊して同時に新しく作り替えることで、老化のスピードを遅くして生存しているということです。これは生物以外でもすべての物事に当てはまる原理であり、組織についても言えることです。組織活動も放っておけば無秩序で乱雑になり社会的訴求力を失っていきます。自然に対し先回りして自らの業務内容を壊し同時に新しく作り変えねば朽ちてしまうということです。
この10年、国際観光施設協会の活動もマンネリ化して朽ちていかぬように様々な変革を行ってきました。「国際観光振興に技術で貢献する公益社団法人」という協会の使命に基づき活動をCSV(Creating Shared Value)、すなわち「会員によし、協会によし、結果社会にもよし」の「三方良し」の理念で行うと決めたことで活性化し領域が広がってきました。さらに、観光の本質はホスピタリティであるということに立ち返り、国際観光振興に寄与する技術に関する活動を「もの」「社会」「自然」への3つのホスピタリティに整理しました。そのなかでイタリアの分散型宿泊アルベルゴディフーゾをIT化するCSV活動は町と町をつなぐ「LINKED CITY」へと進化し、協会員が始めた組織は全国的展開し今では参加企業は80社を数えるまでに成長しています。
ビジネスではない公益活動であるからこそ、実務的障壁に煩わされることなく、かつ利己ではなく利他の精神での開発が可能であり、また関係官庁との連携も容易に取れることにより、トライアルアンドエラーでタイミングを逃さずにあらゆる可能性を試し壊して再創造できるのです。
「SDGsは利他である公益活動でトライアンドエラー方式のスタートアップを行い、また利己であるビジネスの世界に戻って利潤を追求するという社会モデルで可能となります」
協会創立70周年に大きな夢を見ました。
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