【観光業界リーダー年頭所感】株式会社日本旅行 代表取締役社長 小谷野悦光 氏
謹んで新年のごあいさつを申しあげます。
2022年を振り返りますと、新型コロナウイルス感染の波に応じて旅行需要が一進一退を続けるといった状況が依然と続きましたが、一方で世界に遅れをとることなく経済活動を正常化していこうという動きが加速していきました。特に夏場には国による「一律の行動制限は課さない」とした指針が示され、10月に「全国旅行支援」「水際対策緩和」が開始されたことは、旅行に対して逡巡していた消費者の背中を押してくれる、旅行需要回復に向かう大きなけん引役となりました。移動や交流を生業とする旅行業にとっては、たいへん心強いメッセージであり、この時から、消費者も私たち事業者も、自分自身でいま何が最適かを考え、行動とリスクを両輪に主体的に動けるようになったのではないでしょうか。
国内旅行におきましては、観光産業に対する支援策「全国旅行支援」が23年も継続されることとなりました。コロナ禍において日本経済が厳しい中、観光産業の持つポテンシャルに期待し支援いただいていること自体がありがたいことで感謝の念に堪えません。まだまだ乗り越えなくてはならない経営課題も多くあることは事実ですが、全国の旅行・観光に携わる皆様が活力を取り戻せる機会になるようにと前向きに受け止めております。さらにその先へ、ただ観光するだけでなく旅行者自身の行動変容までを促すような、サステナブルツーリズムをはじめとした社会の課題とも連動した新しい旅行のスタイル・顧客体験を提供できるよう推進してまいります。
また、およそ2年半ぶりに再会された訪日観光旅行についても、今では多くの外国人観光客を街で見かけるようになりました。完全復活までは長い道のりになりますが、日本へ対する関心は依然高く、海外の旅行会社からは、日本の誇る桜の時期のツアー造成に関するお問い合わせを連日いただいています。これからは、我々旅行会社が、慎重かつ丁寧に日本の新しい旅のスタイルをお伝えしていくことで、外国人旅行者に居心地よく日本に滞在いただく、また地域にも快く受け入れていただく、外国人旅行者および地域の皆様を前向きにつなげていく、加速するインバウンド再開に対するご理解を促すような環境整備も私たちの仕事として必要になっていくと考えています。
20年のコロナ禍以来、当社は旅行需要が蒸発する中、企業としての生き残りをかけて、「ソリューション事業」と位置付けた旅行業の可能性を広げていく挑戦を続けてきました。SDGsやDX、メタバースといった社会に生まれる新しいキーワードとも連動し、様々な分野の企業・団体とアライアンスを行い、旅行業で培ってきたリソースを活かしながら社会課題の解決に取り組んできました。その最中で、当社は中央省庁をはじめ全国の自治体や多くの地域の皆様とお仕事をさせていただく機会に恵まれました。
そこで再認識したことですが、今後観光を国の基幹産業に押し上げていくという大きな流れの中で、改めて「ツーリズム」の持つ役割や機能は、インバウンドの誘致をはじめ地域経済と密接に関係し、地域の課題解決に大きく貢献できる比類のない価値があるものであると、またその大きな期待を全国の端々から感じたところです。これからは、顧客や地域が求める価値を実現すること、つまり社会課題の解決の一助を担うこと、さらに視座高く見据えれば国家戦略と連動するような課題解決までを推進してまいりますが、当社の基盤であるツーリズム事業と、挑戦を続けるソリューション事業を連携させていくことで、未来の社会に貢献できる企業になるという決意を強くしております。
本年も引き続き皆さま方のご支援・ご鞭撻を宜しくお願い申しあげます。
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