【観光業界リーダー年頭所感】東海旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 金子慎 氏
年頭にあたり、謹んで新年のごあいさつを申しあげます。
平素より、JR東海グループに対しまして格別のご高配を賜り、厚く御礼を申しあげます。
昨年も、新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい経営環境が続きましたが、当社は、安全・安定輸送の確保を最優先に、感染拡大防止に取り組みながら、輸送機関としての役割を完遂するとともに、サービスの一層の充実や社員の業務遂行能力の向上、設備の強化に取り組みました。また、これまでも不断に取り組んできた設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化を一層強化するとともに、安全・安定輸送の確保や輸送サービスの提供に支障しないことを前提に、可能な限りの費用削減を行いました。さらに、効率的な業務執行体制を構築することで10―15年かけて定常的なコストを単体で800億円削減する「業務改革」を推進するとともに、新しい発想により「収益の拡大」を実現することに挑戦し、経営体力の再強化に取り組みました。
東海道新幹線では、引き続き大規模改修工事や脱線・逸脱防止対策等の地震対策を進めるとともに、新型車両N700Sの追加投入及び既存のN700Aタイプに対してN700Sの一部機能を追加する改造工事を進めました。
在来線については、地震対策、降雨対策、落石対策等や315系電車の投入を計画的に進めたほか、7月には「ひだ」でハイブリッド方式の新型特急車両HC85系の営業運転を開始しました。
営業施策については、収益拡大に向けて、「ずらし旅」に加え「推し旅アップデート」など魅力ある旅行商品の販売に努めたほか、奈良にスポットをあてた新たな観光キャンペーン「いざいざ奈良」を開始しました。加えてウェブ会議等でご利用いただける個室タイプの「ビジネスブース」を一部のN700S車内に試験的に導入しました。
中央新幹線については、新たに岐阜県駅(仮称)等で本格的な工事に着手したほか、南アルプストンネル長野工区では本坑の掘削を開始するなど、沿線各地で着実に工事を進めました。また、山梨リニア実験線では、改良型試験車による超電導リニアの体験乗車を実施しました。
海外については、米国における高速鉄道プロジェクトについて引き続き着実に取り組んだほか、台湾高鐵に対する技術コンサルティングを進めました。
鉄道以外の事業についても、JRセントラルタワーズと開業5周年を迎えたJRゲートタワーを一体的に運営し、収益の拡大を図ったほか、「東京駅一番街」等の駅商業施設のリニューアルを実施しました。
迎えた2023年も、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい経営環境から本格的に脱却し、鉄道事業者としての社会的使命を将来にわたり果たすため、安全・安定輸送の確保を最優先に、新たな発想も生かしながら鉄道の利便性やサービスに一層の磨きをかけることで「収益の拡大」に取り組むとともに、「業務改革」を推進して経営体力の再強化に挑んでいきます。また中長期的な観点から各種施策を着実に推進していきます。
鉄道事業については、災害対策をはじめとした安全対策を着実に進めるとともに、引き続き、東海道新幹線ではN700S、在来線では315系とHC85系の追加投入を進めます。
営業施策については、「EX―MaaS(仮称)」の本年秋の開始に向けた準備を進めるなど、収益の拡大に向けた取組みを進めます。
中央新幹線については、引き続き「工事の安全」「環境の保全」「地域との連携」を重視しながら、各種工事を着実に進めます。
鉄道以外の事業についても、当社グループ共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」の本年10月の開始に向けて準備を進めるとともに、昨年ジェイアール東海不動産が京都駅の至近で取得した場所での新規ホテル開発の検討を進めるなど、グループの収益力のさらなる拡大を図ります。
このように、当社は「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念をより高いレベルで実現するべく弛むことなくチャレンジを続け、すべてのステークホルダーからの信頼を高め、持続的な成長を目指していく所存です。本年も変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申しあげます。
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