【特別寄稿】「サステナブルな地域観光」のために―旅行者・観光事業者・地域住民の「三方よし」を目指す(3)
長期的な人材育成のため、地域産業への理解を促進
じゃらんリサーチセンターでは長野県塩尻市と共同で、中学生を対象に地域産業への理解を深めるプログラムを進めています。
塩尻市では、観光宿泊業を含む地域の産業の担い手不足が課題となっていました。若者たちは「地元には仕事がない」というイメージを持ち、かつ地域の魅力を実感できず、高校・大学進学を機に地元を離れる傾向が強かったのです。
そこで、塩尻市立塩尻西部中学校において、総合学習の時間内に地域産業に触れる機会を増やし、地域の未来の担い手を育てる取り組みを行っています。
塩尻の特産品はワイン。2022年度には、「塩尻市産のぶどうのファンを増やすには」をテーマに、中学生がマーケティングや商品開発に取り組みました。
教師や教育委員会の大人たちは、基本的に「支援」する立場。生徒主導で取り組み、ワイン製造工程での廃棄物をリサイクルした新商品の開発・販売にまでこぎ着けています。
このプロジェクトは、地域内の「関係の質の向上」という効果を生んでいます。
中学生を中心に、学校・地域教育協議会・地域事業者・商工会議所などこれまで接点がなかった組織や人々がつながり、地域の人材を地域全体で育てていく基盤が整ったのです。
また、学生からは「塩尻とぶどうの可能性は無限大だと思った」という声も上がっており、地域への興味関心が高まっています。
持続可能な地域観光を進めていくために
コロナ禍で大きな影響を受け、人材確保が急務となっている宿泊業において、サステナブルな観光旅行業の実現に向けては、人材という観点では、外部人材活用と現場の働きやすさによる地域の魅力づくりが必要だといえるでしょう。
特に、観光・宿泊業の働き手が大事にしている「旅行者の喜び」を感じられる機会が増やすことは、働く人材の定着に繋がっていきます。ES(従業員満足度)がCS(顧客満足度)に繋がり、それが業績の向上につながっていく流れをつくっていくことができると考えます。
地域の観光・宿泊業はグローカル=グローバル(世界規模で通用する)+ローカル(地域に根差す) な産業です。今後よりいっそうインバウンドも増えていくため、グローバル視点、水準も学べます。地域の宿はたくさんの「ありがとう」であふれた、グローカルな職場と進化することで、多くの人にとって「働きたい」場所に変わっていくことが今、求められています。

じゃらんリサーチセンター
主席研究員
森戸 香奈子

ジョブズリサーチセンター
センター長
宇佐川 邦子
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