【観光業界リーダー年頭所感】国土交通省近畿運輸局 局長 日笠弥三郎 氏
新年あけましておめでとうございます。
昨年を振り返りますと、5月に新型コロナの感染症法上の位置づけが2類相当から5類に引き下げられました。関西においては、観光需要が復調し、インバウンドも回復基調が鮮明となり、10月には訪日客数が単月で初めてコロナ前の水準を超えるなど、観光を中心に人流が活性化してきました。このように昨年は、3年以上にも及んだコロナ禍を乗り越え、関西のさらなる発展への足がかりとなる1年でした。
一方で、交通・運輸・観光をはじめ多くの業界において人材不足の問題が顕在化し、いわゆる「2024年問題」がマスコミ報道でも頻繁に取り上げられました。
本年4月からは、交通事業者においても自動車運転者に時間外労働の上限規制が適用されることになり、さらなる運転者不足に陥ることが懸念されます。加えて、昨今の円安傾向や世界情勢等により、原材料・燃料価格は高止まりの状況にあります。本稿をご覧の皆様の多くは、このような厳しい経営環境下においても物流網や地域の公共交通の維持に日々ご尽力いただいていることと存じます。このように困難な状況下ではありますが、政府による支援等も最大限にご活用いただき、難局を乗り越えていただきたいと存じます。
そしていよいよ、2025年4月の大阪・関西万博の開幕まで470日を切りました。関西経済の回復とさらなる発展のためには、交通・運輸・観光産業の活性化が必要不可欠です。当局としては、万博の開催を最大の好機と捉え、観光政策と交通政策を一体的に推進しており、種々の具体的なプロジェクトを進めています。本年も引き続き関係機関と緊密に連携しつつ、各種支援制度の周知徹底をはじめとした総合的な支援を講じてまいります。
交通・運輸・観光に関して、近畿運輸局では「2025年大阪・関西万博に向けた観光政策と交通政策の一体的な推進」「公共交通の整備・維持確保」「生産性の向上・人材の確保等・環境対策の実施」および「安全・安心の確保やバリアフリー対策の実施」の4つの柱を中心に進めてまいります。
国内外の観光需要は、堅調に回復しており、関西においても、さらなる需要の拡大が期待されるため「観光立国推進基本計画」など政府の方針を踏まえつつ、関西経済を支える観光関係事業者の皆様方と「住んでよし、訪れてよし」の持続可能な観光地域づくりに向けた施策を推進しているところです。
こうしたなか大阪・関西万博は、関西全体に国内外からの注目と消費支出による経済効果をもたらすことが期待されますが、当局においては万博に向けた観光政策・交通政策を強力に進め、万博に向けた誘客プロモーションや万博来場者の関西周遊の促進に向けた取り組みにより、万博来場者による賑わいを、大阪から関西全域の賑わいへとつなげ、さらに全国へと広げることで、関西から観光立国の復活に貢献したいと考えています。
昨年8月には「大阪・関西万博に向けた関西観光アクションプラン」を改訂し、関西の魅力ある地域資源のポテンシャルが最大限発揮されるよう「テーマとストーリーで地域をつなげる」「人材で地域をつなげる」「情報で地域をつなげる」の3つの視点に加え、関西周遊の促進に向けた施策を一層推進するため「交通」の視点を追加しました。関係者と連携し、アクションプランに掲載しているプロジェクトを着実に推進することを通じて、万博の成功に向けて貢献してまいります。
その一つとして、関西広域でシームレスな移動手段を提供すべく、観光・経済団体や国・自治体等多様な関係者とともに「関西MaaS推進連絡会議」を立ち上げ、交通と観光が一体となった「関西MaaS」の取り組みを推進しています。今後、「関西MaaS」は大阪・関西万博アプリとも連携し、万博会場への駅シャトルバス等の予約決済を可能にするほか、デジタル企画乗車券の販売、観光向けの機能強化などを行う予定です。
このほか、万博に向け、会場内ビークルや会場アクセスバスについて電動車の活用拡大など、移動のゼロエミッション化に向けた取り組みが進められており、地域交通のグリーン化事業等を通じて、この取り組みを推進してまいります。
また、令和4年10月に交付が開始された「大阪・関西万博特別仕様ナンバープレート」については、順調に申込件数も増えているところです。万博の開催機運をより一層醸成するため、引き続き、普及に取り組んでまいります。
以上、新しい年を迎え、所信を申し述べました。コロナ禍により打撃を受けた関西経済を本格的な回復軌道に導くべく、本年も全力挙げて各種施策を推進し、交通・観光行政を通じて関西の発展と皆様の豊かで快適な生活の実現に貢献してまいりたいと考えています。
本年も引き続き、皆様方からのご支援ご協力を賜りますよう、心からお願い申しあげ、新年のあいさつとさせていただきます。
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