【観光業界リーダー年頭所感】国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所 代表 本保芳明 氏
新年あけましておめでとうございます。
国際観光は、新型コロナウイルス感染症による危機を乗り越え、回復に向けて順調に歩みを進めています。最新のUNWTOのデータによれば、2023年までにパンデミック前の90%近くまで回復し、24年にはパンデミック前の水準まで完全に回復すると見込まれています。すでにパンデミック前以上の観光客が訪れている国・地域やオーバーツーリズムが指摘されている観光地もありますが、より良い回復を目指し、持続可能で、強じんで、包摂的な観光を志向していることは、各国・地域に共通していると思います。
そうした世界の潮流の中で、日本においても、持続可能な観光に向けて各地で取り組みが進められていることは歓迎したいと思います。23年10月にウズベキスタン・サマルカンドで開催されたUNWTO総会において発表されたベスト・ツーリズム・ビレッジ2023では、過去最多となる約260地域の中から選定された54地域のうち、日本からは北海道美瑛町、宮城県奥松島、長野県白馬村、岐阜県白川村の4地域が含まれています。21年の北海道ニセコ町、京都府美山町と合わせて、計6地域となりました。また、23年11月には、UNWTOが推進する「持続可能な観光地づくり国際ネットワーク(INSTO)」に、岐阜県が国内で初めて加入することになりました。INSTOは指標に基づいて観光による影響をモニタリングすることを求めており、岐阜県は39番目の加入地域になります。さらに、観光事業者や団体における持続可能な観光の取り組みへのコミットメントである、「UNWTO世界観光倫理憲章 民間部門による誓約」にも、23年10月に開催した署名式において新たに5社が署名され、日本の署名団体は6団体28社となりました。
今後も、INSTOへの加入や「UNWTO世界観光倫理憲章」への署名、ベスト・ツーリズム・ビレッジへの挑戦などを通じて、日本各地に持続可能な観光の取り組みが広がり、定着していくことを期待したいと思います。UNWTO駐日事務所としても、先進地域における持続可能な観光に関する優良事例を収集し、アーカイブ化することにより、その経験・知見を皆様の取り組みの参考としていただけるよう、ウェブサイトにて公開しておりますので、ぜひご活用いただければ幸いです。
また、UNWTO駐日事務所では、持続可能な観光の根幹である「レジリエンス」に関して、新たなイニシアティブに着手することとしています。将来の危機に備え、過去の危機から得られる知識・知見を共有し、観光地や観光産業における観光危機管理に対する意識啓発を行うとともに、能力開発の機会を提供していく予定です。その他、本年も様々な事業に取り組んでまいりますので、皆様方の温かいご支援を賜わりますようお願い申しあげて年頭のごあいさつといたします。
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