【観光業界リーダー年頭所感】一般社団法人奈良県旅行業協会 会長 中島昭人 氏
2024年の新春を迎え、謹んで新年のごあいさつを申しあげます。
今、改めて23年を振り返ってみますと、5月の広島サミット開催を機に新型コロナウイルス感染症が第5類へと移行されたことを受けて、人々は行動規制の不安から解消され、人流が戻り、社会経済活動が正常化への道を歩み出しました。
しかし、それは決して手放しで喜べるような状況ではありませんでした。3年間に及んだコロナ禍の爪痕はあまりにも大きく、施設の廃業・閉店、ドライバーや観光事業従事者の労働力不足で、かつてのような受入は見込めず、長年にわたって積み上げられてきた旅行プランは根本的に見直しを迫られました。
そして何よりも、ウクライナやパレスチナで巻き起こる世界情勢の不安定や円安を起因とする原材料費の値上げは、すべての物価高を招き、旅行需要のパイを戻しきれない要因となりました。
全国割などの旅行需要喚起策の終了、本格的に始まったゼロゼロ融資の返済、コロナ禍での退職による深刻な労働力不足を解消し乗り越えていかなければ、私たち中小旅行会社は弱り切った財務状況・体質を健全な状態へと改善することができません。
当然、5年に1度の旅行業の登録を受ける以上、基準資産額の確保が絶対条件になってきます。コロナ禍においては超法規的措置によるコロナ以前の財務指標によって、登録が認められてきましたが、この措置がいつまでも続けられることはないと思います。
お客様に対して安心・安全を担保する以上、一日も早く健全な財務状況の体質に戻すことが、事業を継続する上において、これからの大きな使命であります。
日本国内において人口減少・少子高齢化が顕著に進んでいく中で、旅行業界を取り巻く環境は決して甘くなく厳しいかもしれませんが、創意工夫で道は開け、ビジネスチャンスは十分あります。
従来の旅行業の既成概念にとらわれることなく、地域に育てられ地域に根ざした全旅協会員の優位性を十分に活かすことが求められます。
新たな収入源も模索し、送客事業のみならず誘客事業でも活路を見出し、地域になくてはならない旅行会社、持続可能な旅行会社を目指して行かなければなりません。
昨年、私たち国民を熱狂させ感動の渦に巻き込んだ「侍ジャパン」のWBC優勝、14年ぶりの「世界一」奪還は、選手全員が信じ合い必ず優勝するという目的を誰一人揺るぐことなく共有していたからこそなし得たものだと思います。
奈良県旅行業協会においても目指すべき方向と目的をしっかりと見出し会員全員が共通意識を持って臨むことで個々が力を付けられるように、そして協会の財産となるような事業展開を行っていきたいと思っています。
最後になりましたが、皆様のご健康とご多幸、そして上昇気流に乗る辰年になることを切にお祈り申しあげ、新年のごあいさつとさせていただきます。
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