【観光業界リーダー年頭所感】一般社団法人日本旅行業協会 会長 高橋広行 氏
謹んで新年のごあいさつを申しあげます。
昨年は、新型コロナウイルス感染症が5月に2類相当から5類へ移行され、すべての旅行が本格的に動き出す年となりました。国内旅行、訪日旅行は急回復を見せ、ほぼコロナ禍前に戻ってきました。10月に実施した「ツーリズムEXPOジャパン2023大阪・関西」では一昨年の東京開催を上回る14万8千名が来場し、まさにツーリズムの新たな幕開けにふさわしく、旅行への機運の高まりに手応えを感じるイベントとなりました。
国内旅行・訪日旅行が活況を取り戻す中、海外旅行はいまだ19年比6割程度という状況であり、海外旅行自由化60周年を迎える本年において、その完全復活は最も重要な課題であると考えています。観光庁におかれましても訪日旅行を伸ばすためには双方向の国際交流が重要であるとの考えのもと、海外旅行の活性化に向けて「アウトバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージ」が策定され、JATAも連携し、官民あげて取り組んでいるところです。
旅行商品については、高付加価値商品の提供、アドベンチャーツーリズムのような新たな旅行分野の拡大に取り組み、マーケットの定着に向けて進んでいく年にしたいと思います。また、グローバルに求められていますSDGsへの取り組みや持続可能な観光の実現に向けて、業界あげて新たな価値創造にまい進してまいります。
しかしながら観光産業には課題も山積しています。急激にマーケットが回復した国内では、一部地域でのオーバーツーリズムが大きな問題になっています。これについては旅行者の地方分散化や時期の平準化、DXを進めることで解決していく必要があります。また観光産業の各分野で人手不足が深刻になっています。生産性の向上、労働環境の改善を図り、観光産業の魅力を伝え、人材の確保・育成を推進してまいります。
また、昨年来取り組んでおります「観光産業共通プラットフォーム」の全ての機能の稼働を12月から開始しました。これにより宿泊施設様、旅行会社双方の業務の効率化と緊急時における迅速な情報共有が可能となります。本年さらに観光関連事業者との連携促進に努めてまいります。
旅行業界の完全復活と活性化のために多くの課題へ取り組んでまいりますが、すべての事業はコンプライアンスがベースになくてはなりません。業界では、国や自治体の旅行支援、雇用調整助成金、受託事業に関わる不正などコンプライアンスに関わる事案が発生し、社会的な信頼を失うという事態となりました。本年、外部の有識者のご意見も伺いながら、意識と行動の変革と信頼回復に向けて真摯に取り組んでまいります。
本年も皆様のご指導・ご鞭撻を何卒よろしくお願い申しあげます。
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