【観光業界リーダー年頭所感】株式会社JTB 代表取締役社長執行役員 山北栄二郎 氏
新春を迎え、謹んで新年のごあいさつを申しあげます。
昨年5月の新型コロナウイルス5類感染症への移行に伴い、私たちは3年超に及んだコロナ禍を克服し、旅や交流による笑顔が日常生活に戻ってきました。国内旅行に加え、目覚ましい回復を見せたのが訪日インバウンド旅行です。中国市場が回復途上である中、昨年終盤には2019年を上回る訪日外客数を記録するなど、日本に対する関心が一段と高まっています。世界の人流を見ても、昨年の国際観光客到着数はコロナ禍前のおよそ90%の水準まで回復、今年の世界旅客数は2019年比102・5%の94億人に達すると試算され日本発着以外のグローバル旅行も著しい回復が見込まれます。
一方で日本発の海外旅行については、地政学リスクや円安の進行、燃油高騰などにより、完全な回復までには時間を要しています。私たちは海外旅行の機運醸成に一層努めるとともに、JTBグループの財産である海外拠点ネットワークの力を生かし、渡航するお客様の安心・安全に加えて、その体験が豊かなものとなるよう、受け入れ態勢を万全に整えてまいります。
さて、昨年開催された2023ワールドベースボールクラシックやラグビーワールドカップ2023では、多様性あふれる日本代表選手の活躍がたいへん印象的でした。当社所属の松山恭助選手(フェンシング男子フルーレ)も、世界選手権において日本の団体史上初となる金メダルをもたらすなど、さらなる活躍が期待されます。今年は「第33回オリンピック競技大会(2024/パリ)・パリ2024パラリンピック競技大会」や、「国民スポーツ大会・佐賀(SAGA2024)」が行われ、2025年には「世界陸上競技選手権大会」が18年ぶりに日本(東京)で開催されます。
スポーツのみならず、3月には北陸新幹線が敦賀(福井)まで延伸し、国内外のお客様に北陸地方の魅力をより一層知っていただく機会となるでしょう。2025年に開催される「日本国際博覧会(大阪・関西万博)」では、訪れたお客様に大阪を起点に日本全国を回遊していただけるよう、47都道府県にあるJTB拠点を有効に活用してまいります。
2025年はまた、「汽車時間表」として創刊したJTB時刻表が100周年という大きな節目を迎える年でもあります。現在ではライフスタイル全般の情報をカバーするに至った出版事業を始め、交通と宿泊手配から発展したMICE運営、報奨旅行や修学旅行の知見から考案された従業員エンゲージメント向上や教育活動支援の各ソリューション、事業パートナーの皆さまと進める観光産業のプラットフォーム基盤整備など、すべて祖業である“旅”から進化させてきたビジネス領域です。私たちは人と社会に深く関わるこうした領域に、デジタル化とDX推進の投資を行い拡大していくと同時に、担い手となる社員がその力を十分に発揮できるよう、DEIBを強力に推進してまいります。
JTBグループの経営理念である「地球を舞台に、人々の交流を創造し、平和で心豊かな社会の実現に貢献する」、その大前提となるのが豊かな地球の存続です。コロナ・パンデミックは収まりましたが、国連事務総長により“グローバル・ボイリング”と表現された気候変動は、カナダやハワイ・マウイ島での森林火災の遠因となり、私たちが地球市民の一員として速やかに行動する必要があることを示唆しています。
新たな一年も、コンプライアンスを最優先に、私たちの企業活動ひとつひとつが経営理念を実現し、持続可能なツーリズム産業の未来につながるものとなるよう、弛まぬ努力を続けていくことをお約束し、年頭のごあいさつといたします。
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