【観光業界リーダー年頭所感】一般社団法人日本旅館協会 関西支部連合会青年グループリーダー 針谷亮佑 氏
あけましておめでとうございます。
早いもので2023年はコロナ明け元年と言われてから1年が経過しました。弊社は期末が7月ですので前期は22年8月から23年7月でしたが、おかげ様でグループ6施設すべてで過去最高の売上・利益を更新することができました。インバウンドの再開、コロナの5類化、全国旅行支援、改装工事明け(22年7月オープン)と好条件が重なったこともあり、従来よりも高単価で高稼働を続けられたことが主な要因です。
一方で絶対値では良かったものの、相対値に焦点を当てると利益率が明確に下がってきており、直近でも月次では昨年対比増収減益の月が増えてきております。言うまでもなくエネルギー高や世界情勢の不安定化による原価高騰、人件費・外注費増、あらゆるもののコスト増によるものです。宿泊単価への転嫁も行っていますが100%とはいかず、いかにして顧客満足度との釣り合いを取るべくクオリティの向上とともに行えるかが喫緊の課題です。
また、人件費増は最低賃金増は当然ですが全国で慢性的に顕在化してきている人手不足に起因する初任給や中途採用費用の値上げ合戦も無視できない影響があります。加えてライフワークバランスや働き方の多様化により我々宿泊業界の弱点である年間休日数も最近では就職活動の際の大きな評価ポイントとなってまいりました。労働集約型の装置産業である我々宿泊業界にとって水光熱費などの固定費増、仕入原価増や人件費増などまさに三重苦四重苦以上の多重苦状態です。そしてこれらはしばらく改善の見込みがないことも業界の未来に暗雲となって我々にとって「コロナ禍はまだ終わっていない」と言わしめる要因であることは明らかです。
そんな中で我々ができる唯一の事は「日々の学び」であると考えております。確かにDX化(ロボット搬送機の導入)や新業態設立(ワンちゃんの宿)や社員の資格取得補助制度、健康経営の実施など小手先の取り組みは行っておりますが、それ以上に効果を実感できるのは毎年2千枚以上社内で出ている改善メモです。一人ひとりの社員の小さなことの積み重ねが大きな効果を呼んでいると私は見ています。それは経営者にとっても同じことで、日々の小さな経営努力が積み重なって経営者を成長させ、その経営者を映す鏡として会社がともに成長していくのではないでしょうか。
昨年こちらの所感で故稲盛和夫氏の「誰にも負けない努力をする」を引用しましたが、同氏の有名な言葉として「組織はトップの器以上にならない」とも発言されています。であれば会社の成績を良くする、ひいてはお客様や社員に喜んでもらえる会社にするということはイコール経営者がいつまでも学び続ける以外に道はないのではないでしょうか。私はまだ年齢的には論語でいうところのようやく立ったばかりの浅学菲才の身ですが、最近は強くそう思うようになりました。
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