【観光業界リーダー年頭所感】一般社団法人日本温泉協会 会長 多田計介 氏
皆様、新年あけましておめでとうございます。2025年の年頭にあたり謹んでごあいさつを申しあげます。皆様には平素より当協会へのご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。
昨年は元旦から能登半島地震、9月には豪雨災害に見舞われ、被災されました方々におかれましては心よりお見舞い申しあげますとともに、一日も早い復旧復興をお祈り申しあげます。
私は、昨年6月に宮城県仙台市秋保温泉で開催された会員総会で会長に選出されました。日頃より当協会の活動に対し多大なるご尽力とご厚情を賜りまして厚く御礼申しあげます。
日本温泉協会は1929年創立以来、温泉資源の保護と温泉の活用、温泉知識の普及に努めてまいりました。全国的温泉関係団体としては最古の団体であり、4年後の2029年には創立100周年を迎えます。これまで全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)会長職を6年務めさせていただきました経験を活かし、ささやかではございますが当協会の事業活動にまい進してまいりたいと存じます。
日本温泉協会は事業活動目標の柱として次の3点を掲げています。1つ目は「温泉資源の保護」です。昨今の国策としての再生可能エネルギー事業は地熱発電開発を拡大する方向にあります。当協会としては「地熱開発に秩序を求め」5つの提言の順守を求めてまいります。当協会内に地熱対策特別委員会を設置し、温泉事業者と地熱事業者、国や自治体との協議の場を設け、ただやみくもに反対するのではなく「共生」を模索したいと考えます。
2つ目は「温泉資源の活用」です。日本は世界有数の温泉大国です。日本各地に湧出する温泉は太古以来日本人のくらしの中で欠かせないものです。入浴や飲泉による「湯治」だけでなく温泉街独特の建築や街並み、様々な食文化が海外のSPAとは違う固有の生活文化を作り出してきました。日本温泉協会では鹿児島県指宿温泉で開催された2019年会員総会で「日本の温泉文化をユネスコ無形文化遺産に登録すること」を目標とする決議を全会一致で採択しました。コロナ禍もあり活動中断を余儀なくされておりましたが、全国温泉振興議員連盟(参議院議員中曽根弘文会長)、「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録推進議員連盟の国会議員の方々のご協力と群馬県を事務局県とする「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録を応援する知事の会(鳥取県知事平井伸治会長)のご努力により、政府の骨太の方針に「温泉」の文字が記載されました。今後は早期登録を目指し温泉関係3団体(全旅連・日本旅館協会・日本温泉協会)が中心となって設立した「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産全国推進協議会(https://www.onsen-culture.org)の拡充を図ってまいります。当協会としては学術的側面から温泉文化の定義、わざ、担い手を検討したいと考えます。この活動が様々な災害で疲弊した温泉地の活性化と温泉地で働く方々の誇りを取り戻すきっかけとなればと念じております。
3つ目は「温泉知識の普及」です。当協会では温泉研究者の権威が集い学術部委員会を設置しています。学者の方が中心となり「季刊温泉」を年4回発行し研究内容を発表しています。10言語対応温泉入浴エチケットポスターを発行してマナー普及に努め、温泉を多角的に研究する温泉検定も継続して実施します。
インバウンド客の増加は今後対応の課題となります。当協会にも多数の海外団体から交流促進の依頼が来ております。日本の温泉が世界の注目を集めているといえそうです。次年度からは温泉の国際交流も当協会の事業として取り組みます。
「裸同士で一つの湯船に浸かり静かに瞑想する」日本の温泉文化は海外には見られない固有の温泉文化と思います。是非とも日本のみならず世界の方々にこの素晴らしい文化をご理解いただき、ユネスコ登録に向けご協力を賜ればと存じます。皆様方の益々のご健康とご繁栄を祈念いたします。
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