【観光業界リーダー年頭所感】公益社団法人日本バス協会 会長 清水一郎 氏
明けましておめでとうございます。日ごろより日本バス協会の運営にご理解とご支援を賜り御礼申し上げます。
昨年を振り返りますと、少子高齢化による輸送人員の減少が続き、新型コロナ感染症の影響を大きく受ける中、バスの需要は回復傾向が継続しているものの、コロナ前の水準までには依然として戻っておらず、バス運転士の不足により減便や路線廃止をせざるを得ないような事態が全国各地で頻発しております。バス運転士確保は喫緊かつ重要な課題です。また、燃料価格高騰も長期化しており極めて大きな負担を強いられています。バス事業は本当に危機的な状況に置かれています。
このような状況を踏まえ、昨年11月には3年連続で「バス危機突破総決起大会」を開催いたしました。全国からバス事業者の方々約300名が結集し、ご出席いただいた約60名の自民党国会議員の先生方へ、バス事業の危機的な状況を訴えて支援を求め①深刻な運転士不足の解消②自動運転バスの本格運行に向けた支援大幅強化③EVバスなどの普及で環境に貢献④完全キャッシュレス化の実現―の4つの項目について決議を行いました。
まず、深刻な運転士不足の解消には、運転士の待遇改善、特に賃上げをしていく必要があります。そのための原資となる運賃改定がコンスタントに必要であり、バス運転士の雇用環境を改善することにより、人手不足対策につなげていきたいと考えております。さらに外国人労働者をバス運転士として受け入れるための制度が創設されましたが、関係機関と連携して早期の受入れの取り組みを進めてまいります。
自動運転バスについては、実証実験段階から路線バスでの本格的な運行、レベル4をぜひ進めて行きたい。日本には技術がありながら海外に遅れをとっており、国家プロジェクトと位置付け、予算のメリハリと集中により実現していきたい。
2030年に1万台の導入を目標に掲げているEVバスについては政府が目指す2050年までのカーボンニュートラル実現のため、バス業界としても大きく貢献できるよう大幅に増額された国の補助金を活用して目標の達成に向けて引き続き取り組んでまいります。
完全キャッシュレスバスについては現金の管理コストや運転士の負担軽減といったバス事業者の経営改善、定時運行の確保といった利用者の利便性向上等の観点から有効な取組であると考えており、現在、全国18事業者29路線で実施している実証運行を活かしてさらに対象路線の拡大に努めたいと考えております。
貸切バスについても深刻な人手不足により、修学旅行等が集中する時期を中心に、貸切バスや宿泊施設の手配が困難な状況となっています。このため、比較的閑散である時期及び曜日に実施いただくべく要請を行った結果、関係省庁間でご対応いただき「修学旅行等の実施時期の柔軟な検討について」を文部科学省から各都道府県教育委員会等に通知がなされました。今後、各県において関係者の協議を進めてまいります。
貸切バス安全性評価認定制度については、令和7年度の申請分から、運転士の技術向上や健康管理等に積極的に取り組む事業者を高く評価するとともに、最上位を5つ星とするなど制度開始以来初めてとなる抜本的な見直しを行い、さらなる利用者の安心の向上に努めることとしました。
バスが走って人々の生活や地域を支え続けていくことは我々の誇りでもあります。夢のあるプライドある産業として、バスがさらに輝く時代を創るため「バス再興10年ビジョン」を実現し、バスを夢のある産業にしていきたい。
安全はバス事業者最大の使命です。安全運行、事故防止を徹底し、安全・安心なバス輸送サービスの提供に努めてまいります。皆様のご理解、ご協力を重ねてお願い申し上げます。
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