【観光業界リーダー年頭所感】東京都ホテル生活衛生同業組合 理事長 工藤哲夫 氏
新年あけましておめでとうございます。皆様方におかれましては、輝かしい新年をお迎えのことと心よりお慶び申しあげます。
昨年はコロナで苦しんだ苦悩の期間を脱し、一気に高見に登ったような年でありました。10月には単月で過去最高の訪日外国人数を記録し年間の累計も3500万人を超す勢いでありました。また、外国人訪日客の消費額が2023年の5・3兆円を上回り7―8兆円に達すると言われております。日本の産業の一番の稼ぎ頭と言われる自動車産業が15兆円ですので大きな柱になってきたと感じる次第であります。
しかしながら、永年デフレ環境に浸ってきた日本社会に世界各国からインフレの波が押し寄せてまいりました。特に原材料費や光熱費の高騰、人手不足による人件費の高騰など、じわじわと経営に負担を強いております。インバウンド効果のプラスの影響を享受できる産業や地域にとってはありがたい話でありますが、そうでないところでは物価や人件費の高騰のみが影響し価格の転嫁が進まない状況で甚大な影響を及ぼしております。東京の街を見渡しても、表面的には変化が少ないように見えますが、注意深く見ると店舗の閉店や店の入れ替わりが多々見受けられ競争の激化や栄枯盛衰が感じ取れます。
今後人口減少の波が本格的に押し寄せ、インバウンドやお客様がいらしても受け入れられない、経営が成り立たないことも起きてくるでしょう。
このような状況を鑑みると、現在はたいへん大きな分水嶺に差し掛かって来ているように感じます。我々経営者はこの難局を乗り越えていくことが大きな役割でありますので、新しい商品やシステム、考え方など新しい情報を共有し、さらなる高みを目指していくことが重要かと考えます。
具体的な方策として、DXによる業務の見直しやサービスの無人化、外国人労働者の積極的な採用など、従来の考え方や業務の見直しが必要だと思います。
組合においては、各種の情報を収集しセミナーや機関誌、展示会などを通じて組合員の皆様に還元してまいりたいと思います。また、経営者自らも研さんを重ね、新しい世界に飛び込む覚悟が必要になると思います。インバウンドによるマーケットの拡大を喜びとし大きな時代の変化を乗り越えてまいりましょう。
今年は、4月―10月に大阪・関西万博が開催され、9月に第20回世界陸上競技選手権大会、11月に東京2025デフリンピック大会が東京で開催され、国の内外から大勢の方々が訪れます。これを機に、昨年を超える多くのお客様が東京を訪れ、都内の宿泊業界が世界からさらに注目されることになります。
インバウンドで上昇気流に乗る東京の宿泊業にさらに追い風が吹くことになりますが、反面、安全・安心で衛生的、かつ良質なサービスを提供する役割が私たちには求められますので、その期待に応えるべく、対応してまいりたいと思います。
そして今年は巳年です。蛇は古代から再生や永遠の象徴とされ、さらに蛇は金運の象徴としても知られております。皮を脱ぎ捨て新たな姿に生まれ変わる姿がその象徴となっていますので、私たちも蛇のように知恵深くかつ粘り強く、新しい挑戦や変化に対して前向きな姿勢を持ち、業界のさらなる発展を目指してまいりたいと存じます。
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