女性目線でまちづくり―相差女将ちどり会(2) 転機
三重県鳥羽市相差(おおさつ)。伊勢エビやアワビなど伊勢湾の海の幸が豊かな好漁場で、古くから海女漁が盛んだった。今なお100人海女がおり、全国一多いと言われている。
だが、海女の活躍とは裏腹に、伊勢志摩エリアの一大宿泊拠点として栄えた相差は新鮮な魚介類を求める男性客が圧倒的に多く、受け入れる宿も男が中心に切り盛りしてきた。
そんな相差に転機が訪れる。2004年のアテネオリンピックで、野口みずきさんが女子マラソンの金メダルを獲得したのが契機だった。野口さんはレース前に「石神さん」のお守りを手渡されていた。「女性の願いを一つだけ叶える」という石神さんのご利益が金メダル獲得の秘話として報じられ、相差の石神さんはにわかに注目を集めることになった。
石神さんは、海女が信仰していた海の女神、玉依姫命を祀る。海に素潜りし危険が伴う海女は、魔物から身を守り漁から無事に戻るため信仰心が厚い。格子と星の印、ドーマン・セーマンも海女の護符だ。
石神さんをお参りする女性は日増しに多くなった。現、相差観光協会会長の梅本三鶴さんは「まちが一気に華やかになった」と述懐する。
同時に、梅本さんは旅行会社へキャラバン活動やセールスに行くたびに違和感を持ち始めた。「相差に限らず、旅行客は女性がけん引しているし、旅行会社さんの受けも女性の方がいい」。ほかの地域が女性をメーンに活動しているのと対照的。
そうして相差の女性が外で活躍する素地が整っていった。(続)