かつて高野山にゴンがいた 和歌山・慈尊院(1) 参詣者を導く不思議な犬
今年6月、女人高野ゆかりの地として日本遺産に認定された和歌山県九度山町の慈尊院。2004年には世界遺産にも登録されている名刹だ。同院の境内に、弘法大師像と並んで1匹の犬の石像が鎮座している。その犬は「ゴン」という。慈尊院から高野山まで参詣者が迷わないよう案内した伝説的な案内犬だ。この世を去ってから18年経つが、今なお多くの人たちに愛されている案内犬ゴン。ゆかりの人に話を聞いた。
慈尊院は、高野山開創と同じ弘仁7年(816年)、高野参詣の表玄関として弘法大師(空海)が伽藍を創建したのが始まり。その名は空海の母、玉依御前(たまよりごぜん)にちなむ。高野山の七里(約28キロ)四方は女人禁制だったため、空海の母はここで過ごした。しかし、承和2年(835年)2月5日に逝去。空海は、母のための弥勒堂を建て弥勒仏坐像(国宝)を安置。弥勒菩薩の別名が慈尊で、母が弥勒菩薩に化身したとの信仰により以来、慈尊院と呼ばれるようになった。
その後、現在に至るまで女性を中心に女人高野として信仰を集めるとともに、四国遍路のお礼参りで高野山を訪れる行き帰りにお参りする人が絶えない。もう一つ、麓から高野山へと続く本街道で世界遺産にも登録されている「町石道(ちょうせきみち)」の玄関口としても多くの人が立ち寄る寺院でもある。
昭和60年代、慈尊院の近くに紀州犬と柴犬の雑種である白いオスの野良犬が住みついた。当時を慈尊院の副住職、安念邦賢さんはこう話した。
「ある日、お遍路さんの格好をした人やリュックを背負った人を見分けて、その犬が『ワン、ワン』と吠えるんです。いろんな想いを抱えた方々が町石道を歩いて登る習わしがあるので、そういう方を犬が見分けているんです。その人たちの50メートルほど先を歩いて、途中振り返ったり待ったりしながら6、7時間かけて高野山まで案内するんです」
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