フェリークルーズの可能性を探る 各社代表による観光座談会(1)
今年、大阪―新門司航路を運航する阪九フェリーと名門大洋フェリーが相次いで新造船を就航。宮崎カーフェリーも昨年10月に航路を神戸―宮崎に変更し、オレンジフェリーは自転車需要に対応した取り組みを行うなど個人客を視野に入れたフェリークルーズを実施している。関係者にお集まりいただき話を聞いた。
貨物の下支えで各社好調
<出席者>
河越 順太郎さん(阪九フェリー取締役関西支店長兼神戸支店長)
山本 哲也さん(名門大洋フェリー常務執行役員営業統括部長)
岡田 良敬さん(宮崎カーフェリー取締役常務執行役員関西支店長)
山田 惣吾さん(四国開発フェリー営業部副部長)
前川 一郎さん(国土交通省近畿運輸局海事振興部長)
―各社の現状を教えてください。
河越 2013年からトラックに関してはアベノミクス効果やモーダルシフト(トラックから鉄道や船に替えること)の推進を背景にトラックの動きがかなり出てきており、平日はほぼ満積状態が続いています。このため船舶の大型化を進めてまいりました。旅客の13年度は出雲と伊勢の式年遷宮があり、特需と言えるほどの動きがありました。その後反動が大きく響いています。
14年度の上期は消費税のアップや韓国のフェリー事故の影響もあり下降気味でしたが、下期は少し取り戻し落ち着きが出てきています。今年に入り新造船を投入ということで1月の予約状況をみていますと、新船効果が出てきているように思います。
船価の問題や経済状況、高速道路の影響もあり、6隻から4隻体制に減便をしたぐらい厳しい状況を乗り越えての今回の新造船ですが、女性社員の声もかなり反映させた、いい船になりました。
山本 私どもも今秋2隻の新造船投入で、河越さんがおっしゃったように船は15年償却のベースで通常18―20年でリプレイしていくものです。船によって幅はありますが、船価は1隻60億円から100億円はかかる大型の投資になるので、安定的な政策がないとできません。私どもの場合は新造船だけではなく、ターミナルの建て替えとかお客様に乗下船いただく艦橋をバリアフリーにするといったことも含めての投資です。
そういったなか貨物の方が長距離幹線輸送ではトラックドライバーが極端に不足してきて、陸送ですべてをカバーできないようになっています。経済もアベノミクス効果で安定し貨物輸送もそれなりに好調です。各フェリー会社の業績はそういった貨物輸送の下支えというベースがしっかりとしてきて、堅調に推移していることがあって我々も大型投資に踏み切ることができました。
岡田 当社は昨年10月に航路を神戸航路に変更し、順調に利用客が増えています。神戸に移って痛切に感じることはアクセスのことです。10月からご利用いただいているお客様は三宮から歩いて乗船できるということで安心感をお持ちいただいているようです。待合所でもお客様の顔の表情が違ってきました。
神戸三宮フェリーターミナルは昨年の9月に新しくできたものですし、旅客サービスの面では非常に喜んでいます。移ってまだ3カ月ほどですが、旅客を増やしていくいろんな好材料があります。これまでから春夏秋冬、団体ツアーでご利用いただけるお客様が多く、最近ではアウトドア関連や登山のお客様が増えています。
2月からプロ野球のキャンプが始まりますが今まで以上にキャンプ見学ツアーが盛況になるのではないかと思っています。というのも港が便利になったことでツアーの集客にも影響が出ているからです。
→フェリークルーズの可能性を探る 各社代表による観光座談会(2)に続く