国際観光都市東京の現在と将来を語る 東京都連・全旅連全国大会記念座談会(1) インバウンドで好稼働続く
一昨年の2017年、創立60周年を迎えた東京都ホテル旅館生活衛生同業組合(都連)。17年5月に開催した記念式典には、小池百合子都知事や多数の国会議員が臨席し、祝賀とともに、国際観光都市・東京の発展に向け、ともに決意を新たにした。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、東京の観光マーケットの現状や都連の活動について、齊藤源久理事長、工藤哲夫理事長代行、林茂樹理事長代理、森永鈴江理事長代理の都連幹部4氏に話を聞いた。
東京オリ・パラのレガシーに期待大
―GW10連休はいかがでしたか。
齊藤 新天皇の即位、新元号の始まりという意味では、昭和から平成への改元を思い出します。昭和天皇の崩御に伴う改元でしたから、1月でしたがほとんどすべての新年会がなくなり、不況が急にやってきた感じでした。それが今回は、これほどの祝賀ムードになるとは思いませんでした。もっと攻めの需要喚起ができたのかなと反省しているくらいです。10連休は上皇陛下からのプレゼントだと思っています。
林 上野でビジネスホテルを経営しています。通常は2月から忙しくなり、3月後半から4月にかけては上野公園の桜が目当ての外国人旅行者が増えます。例年、GW前は前の週からビジネス利用が少なくなり、GWも忙しくありません。今年は10連休ですから心配していたんですが、すごく忙しい連休でした。近所のホテルに聞いても同じような状況だったようです。
―2020年、東京オリンピックがやってきます。東京の観光マーケットの現状と将来性をどう見ていますか。
齊藤 前回、1964年の東京オリンピックの時を覚えていますが、オリンピック期間中、ホテルの稼働は下がったんです。大会関係者の受け入れでブロッキングしていた客室が直前にキャンセルになるといった混乱もありました。そうした経験もあって、私はオリンピック期間も稼動は下がることを前提に、バランスよく集客に取り組む必要性を指摘してきました。ただ、日本国内を対象にオリンピックの観戦チケットが発売されましたが、応募の過熱ぶりを見ると、やはり全国から来る日本人の東京での宿泊需要はあるんだろうと思いました。インバウンドはどうかと言えば、64年の年間訪日外国人旅行者は35万人で、そのうち3万人がオリンピックを観戦したと言われています。それが訪日外国人旅行者数は2018年が3120万人、今年3500万人になれば64年の100倍です。チケット総数から言っても、当時観戦した3万人の100倍の300万人が観戦はできませんが、それでも期間中の訪日客は増えると思います。
工藤 旅連の会合などで、東京の大手ホテルの支配人と話しても、稼働率は軒並み絶好調という状況です。東京にこれだけ次々とホテルが建っているのに、稼働が下がったという話を聞きません。東京の宿泊マーケットの大きさが、増え続けている客室のキャパシティを飲みこんでいるんでしょう。オリンピック以降はインバウンドが鈍化するんじゃないかという見方もありますが、私はオリンピック後も成長は続くと思っています。この5年ほど、旅連の海外プロモーションで、主にアジアの都市を訪問していますが、多くの都市が日本も経験したような高度成長期にあることが肌で実感でき、旅行者が近距離の日本を目指す理由が分かります。日本から見ているだけでは実感できませんが、訪日旅行者の送り出し国の活況ぶりを現地で目の当たりにすると、しばらくは堅調に推移しそうです。
齊藤 オリンピックが残すレガシーへの期待も大きい。新国立競技場をはじめ新たな総合スポーツ施設ができます。オリンピック後は、施設の維持の面からもスポーツ以外に、例えばコンサートやイベントでたくさん使われると思います。音楽業界では、楽曲はインターネットで格安に配信されてしまい、いまやミュージシャンにとって一番稼げるのはコンサートなんだそうです。モノ消費からコト消費の流れもあります。新国立競技場では8万人規模のライブコンサートが開催されるでしょうし、エンターテインメントを提供する場所と機会が増えることは、国際観光都市・東京にとってプラスになるはずです。
もう1つ、オリンピックレガシーとして大きいのが国際線の拡充です。国は羽田国際空港の国際線について、日中の発着回数を年6万回から20年に9万9千回に増やす計画です。成田国際空港のLCC就航も今後ますます増えることが見込まれます。
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