客室流通を革新 佐藤義正さん(国際観光旅館連盟会長)(1)
国が進めるビジット・ジャパン・キャンペーンの受け入れ団体として、同じく国交省の後押しで始まる客室流通イノベーション事業の中心として、国際観光旅館連盟の存在感が増している。日観連が国観連との統合の取り決めを破棄し、統合問題が振り出しに戻ったことで、国観連としての事業に集中できる環境が整ったのかもしれない。国観連自前の客室流通システムの構築を中心に、佐藤義正会長に聞いた。
国観連、新システム構築へ
―日観連との統合白紙化を経て、以降、国観連の宿泊団体としての存在感が増しているように思います。
「国交省はじめ各方面から、今までより熱い視線で見ていただいていることは感じています。1つは国観連としての発言や活動に対する評価だと思います。ビジット・ジャパン・キャンペーンを成功させるために品質の高い日本旅館が必要欠くべかざる存在だということの理解が浸透してきたんじゃないでしょうか。2020年に訪日外国人旅行者を2000万人にしようとすれば、もっと地方に行っていただくことが必要です。そのときに、お客様を満足させられるのは我々日本旅館だという自信も自負も持っています。この点も期待されているのではないでしょうか。旅館は日本にしかありません。日本旅館に泊まることは、宿泊という手段だけではなく、旅行の目的そのものになると思っています」
―国交省が国観連の提案に応じる形で、この冬から「イノベーション促進実証実験」という事業名で、インターネットを使った旅館の宿泊予約サイト構築に向けた実験を始めます。
「国観連も会員の減少に危機感を抱いています。なかでも、会費の費用対効果がないという理由の退会は、我々執行部のアビリティや、組織の活動が評価されていないということです。では、どんな活動をすればいいのかと考え行き着いたのが、客室の流通システム改善への取り組みでした。ほとんどの会員は旅行会社に15%以上の手数料を支払い、客室を販売してもらっていますが、自前の流通システムを構築すれば、これを減らすことができる。一定のレベル以上の日本旅館が1500軒集まった予約システムであれば、消費者の関心も呼び起こせるだろうと思いました。問題は、既存の旅行会社と旅館業界という関係がある中で、どう実現させるかでしたが、国交省が我々の提案をご理解をいただいたことで、検討委員会での議論を経て、実証実験の段階までたどり着きました。まだ実験ですから、しっかりした形にするには2―3年はかかると思います」
―実験的な予約サイトはどのようなものになりますか。
「私たちが考えているのは宿泊予約サイト版のアウトレットモールです。メーカーによる直販のイメージです。実験では、旅行会社とバッティングしないよう、販売する客室をオフ期の平日に限定して試行することになりそうです」
―自前の予約サイトを持つ宿泊団体は他にもありますが、運営に苦戦しているものがほとんどです。
「私たちは、将来的には、会員旅館がリアルエージェントやネットエージェントごとに提供している客室情報も、新たな流通システムで一元管理する方向を模索していきます。ここが違います。旅館業界には、旅行会社への依存体質があり、自社の営業力が著しく低い現状があります。つまり、新しい流通システムへの取り組みは、旅館個々に営業力をつける取り組みでもあります。同じ経費をかけるのであれば、旅館自らが打って出るために使う経費のほうが、旅行会社への依存を強めるために使う経費より、業界にとって将来性のある選択ではないでしょうか。人口減少時代にリピーターを増やすのにも、やはり大事なのは自助努力です。流通システムの構築は、国観連が自前でお客様作りに取り組むことでもあります」
(トラベルニュースat 08年8月25日号)
→客室流通を革新 佐藤義正さん(国際観光旅館連盟会長)(2)に続く