旅館を潰さない 渡邉幸一さん(海栄RYOKANSCEO)(2) 路頭に迷わせず
―順風ばかりではなかったのですね。
他の旅館チェーンのやり方は、旅館を安く買い取って安売りをしていくというパターン。うちは安売りはしない。地域と協調し、地域のためにやっているつもりです。
なぜこうなったのかを学ぶ
四国に進出したのは、その旅館だけではなく、そこが十何本も源泉を持っていたからです。これを他に取られたらまずいというのが一番の理由でした。
もっと言えば地域の救済というふうにも思っています。蒲郡温泉郷ではホテル竹島さんと一緒に複数の旅館再生をやっています。基本的には救済依頼があったところに、うちのスタッフがリスケ(リスケジュール=毎月の返済を猶予してもらうなど)など金融機関に要請するようアドバイスしています。
もちろん、すべてうちができるわけではないので、できる限り金融機関からお金を引っ張り出すことを考えないといけません。それでもだめなら、最後は伝家の宝刀として民事再生があります。例えば、うちが関わった老舗旅館では当初20数億円の金融債権があったのですが、最後調べてみたら36億円もあった。これではどうにもならないということで、民事再生にしました。うちが入ってプレパッケージ型(営業譲渡先が決まっている)の民事再生です。
金融機関は創業家を一掃してくれと言いましたが、100年以上もこの地で営業していてそれはないだろう、おたくも昔はそれなりに稼がせてもらったでしょうとはねつけました。いろんな問題がありダメになったからといって、創業家一族を路頭に迷わせるなんて私にはできない。金融機関と最後まで戦ったのはその一点でした。ただ、取締役からは全員外しました。でも、うちで雇う。従業員を入れ替えるつもりもない。うちからスタッフを入れて教育をやりかえる。そしてモチベーションをアップする。そういうことをやってきました。
これはどこでも同じ。うちからスタッフを2、3人送り込んで常に勉強会を開き、なぜこうなったのかを学ぶ。そうすると見えてきます。退職金が大企業並みだったのを改めるとか、従業員の給料が異常に高いとか、取引先からの仕入れ価格が売り値の80%だとか...寄ってたかって食いもんにしてきたことがね。旅館も悪いんだけど。
そして取引先とは、駆け引きは嫌だからこの条件でやるのなら昔から世話になっているので続けるが、そうでなかったら取引先は変える、と。そういうことを繰り返してきました。
→旅館を潰さない 渡邉幸一さん(海栄RYOKANSCEO)(3) "倅"が生き残るためにに続く