旅館を潰さない 渡邉幸一さん(海栄RYOKANSCEO)(3) "倅"が生き残るために
―乗っ取りという見方をしている向きもあるようですが。
民事再生し子会社にはしますが、その旅館の息子は責任がないのだから社員も含め残します。役員は外しますけど会社に残す。そして再生を図る。うちの傘下に入りたくないのならそれでいいし、それならうちもやる必要はありません。
肩寄せ合って生き残ればいい
うちのメリットはアライアンスを組むことです。1軒や2軒では生き残れない。目標は20軒と言っています。20軒ぐらいになれば、そう簡単にはやられない。結局、手詰まり感でやると、価格競争になってしまう。ネットワークでお客様をどう楽しませるのかに特化していくべきだろうと考えています。そうすると5軒や10軒ではできない。せめて20軒は束ねないとできません。
ビジネスとしての旅館だけではなく、旅館の倅はどうしたら生き残れるかを考えています。旅館業は1千年の歴史があると言われています。いったん潰れた観光地は二度と蘇りません。皆が新しい旅館ビジネスを考えていければいいでしょうが、そう簡単ではない。だったら、旅館の倅同士が力を出し合って日本旅館の良さを自分たちができる範囲のビジネスでやり、どうしたら生き残れるかを模索していかないと仕方がないと。
うちには一本釣りしたメガバンクのOBがいます。旅館は銀行とまともに話をすることを嫌がりますが、地銀ぐらいだったら上から目線で話ができる。地銀相手にこうしたらいい、ああしたらいいと話しをすると銀行からするとコイツはよく銀行の立場をわかって話ができる奴だと思われる。そこで実は以前メガバンクにいましたとなると、潰しても二束三文だよ、競売かけても最悪、民事再生しても債権回収できない、ならなんとか生き残らせる方がいいんじゃないのかと話を進めていくわけです。
基本的にはリスケです。リスケで生き残れる確証があればいいですが、それは金融機関にはわからないものだから、ああしてこうしてやれば、これぐらいのことはできるだろうと。支店長に話をしても上にあげてもらえないのなら、会いにいけばいいんです。本店のトップとまではいかないにしても、融資部長ぐらいとは交渉しないといけません。その時に、うちのOBが同行する。
旅館の倅の食い扶持は稼がないとだめです。これまでは贅沢をしてきただけで爪先に火を灯す気でやればどうにかなるんです。絶滅してはダメです。肩寄せ合って生き残ればいいんじゃないでしょうか。
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