観光は不要不急でない 日本旅館協会・北原茂樹会長に聞く(1) 雇用と健康を守るのが使命
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う非常事態宣言がようやく解除されたが、依然として宿泊業界の経営は厳しい状況が続いている。新型コロナウイルス対策本部を立ち上げ、国への宿泊業支援の陳情活動などを行ってきた日本旅館協会。同協会の北原茂樹会長に、コロナ収束を見据えた協会の今後の取り組みや活動、北原会長の考え、宿泊業界へのメッセージを伺った。
第2波注視も受入体制整える
―コロナ感染症の拡大に伴い、取り組んでこられたことは。
2月に対策本部を立ち上げ、まず取り組んだのは当面のつなぎ資金など金融対策についての対応でした。休業が強いられた会員施設で負担になってくるのは固定費です。固定費のなかでも人件費は重くのしかかってくるので、雇用調整助成金の支給拡大や無利子融資枠の拡大、既存の借入金の返済猶予、固定資産税の減免などの支援策を政府に陳情してきました。
なかでも雇用調整助成金の助成率をリーマンショック後に適用した90%から100%補償にしていただいたほか、固定資産税も1年間免除になったことは大きい。安倍晋三総理自らが「雇用の維持と確保」を訴えてこられたこともあり、我々が要求した案件はほぼ聞き入れていただきました。
いろいろな緊急融資枠の中で1億円までなら無利子で借りることができることになりましたが、3年後に返済が始まった際に金融庁が柔軟な対応を取るとの通達を出すともお聞きしました。いずれにしても政府の雇用調整助成金をフルに使って雇用を守っていくというのが我々の業界に課せられていることです。
6月19日以降は県境を越えての行き来が可能になりますが、かといって即これまでのような旅行需要が戻ってくるわけではありません。夏も全滅ということになると、いくら無利子無利息といっても既往の債務がかぶさってくると、経営的にはかなりしんどくなってきます。すでに6億円から20億円の既往の債務がある大規模旅館は、これ以上の債務の上乗せはしたくないでしょうから。
このままの状況が続けば30年、50年続いてきた旅館は営業を続けられなくなり、外資に買収されざるを得なくなってしまうことも懸念されます。
―6月19日以降、県外移動が可能になる点についての見解は。
非常にありがたいことだと受け止めていますが、6月の時期は再スタートするには梅雨時期で、夏休み前ということでもあり、タイミングが悪い。旅行に出掛けようというムードではないので、実際には夏休みぐらいから動きだすのではないかと。今年の夏休みは10日ほどしかなく、しかも補習があり旅行どころではないのかもしれないので、遠方ではなく県内宿泊、日帰り旅行程度になってしまうことが懸念されます。
一番恐れているのは今年の行楽シーズンに第2波に見舞われないかということです。見舞われないことを祈るのみですが、我々がすべきことは、観光庁のご指示で旅館3団体でつくったガイドラインに準じて態勢を整えていくことです。
お客様に検温や従業員の健康管理を徹底していくこと、熱がある人は決して就業させない、消毒も清掃係だけでなく仲居さんや客室係も一緒になって取り組むといった態勢を今からつくっておくべきです。当協会としてはその点を声を大にして言っていきたい。
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