「ペットと泊まれる」でブランディング 滋賀県おごと温泉・暖灯館きくのや・池見喜博社長(1) お客様の声を具現化する
愛犬家で知らない人がいないほど「ペットと一緒の部屋に泊まれるお宿」として認知されている滋賀県おごと温泉の「暖灯館きくのや」。約20年前からワンちゃんの受け入れを始めた同館の池見喜博社長に現状とこれからを聞いた。
お客様の声を聞き、お客様に喜んでいただける宿づくり
―ペットを受け入れ始めたきっかけは。
20年ほど前に女将(池見社長の母)が常連のお客様から「どうしても飼っているワンちゃんと一緒に泊まりたい」と頼まれたんです。女将はお客様最優先の人で、二つ返事で受け入れたことが始まりです。私自身は清掃が大変なのではないかと反対しましたが、相手にされませんでした。その方の口コミがきっかけで「ペットと一緒の部屋に泊まれる宿」として知られるようになりました。
ただ、今だから話せるんですが当初は内緒で、公にはしていませんでした。ペットと泊まれるとうたう宿は結構あるものの別室のゲージで預かる宿が多く、ペットの体調面などで嫌がる方が多いんですね。当館は一緒の部屋に泊まることが大前提でしたので、徐々に愛好家のご利用が増えていったのだと思います。
―内緒だったとは。
知る人ぞ知る存在でした(笑)。5年ほど経って大手旅行会社から「ペットと泊まれる宿」のプランが出たので初めて公に名乗るようになりました。私自身は「ペットと泊まれる宿・きくのや」と言われるのはどうかと思っていて、一般のお客様よりランクの低い部屋をペットと来られるお客様に提供していました。今思うとたいへん失礼なのですが「泊めてやっている」といった気持ちがあったんでしょうね。
ある時、東京からお越しになったお客様から、客室に来てほしいとお声がかかりました。誉めていただけるとウキウキして客室に行くと、とてつもなくお叱りを受けました。「私はトップクラスのホテルにいつもペットと一緒に泊まっています。ここの対応はどうなっているんですか」とえらい剣幕で。そこでようやく目が覚めました。驕りというのは怖いです。
―それから「ペットと一緒の部屋に泊まれる宿」として躍進が始まるのですね。
東京のお客様のお叱りを受けて感じたのはペットの有無にかかわらず、「この宿に泊まって良かった」と思っていただきリピーターではなくファンになっていただくことこそ、お客様をお迎えするということなんです。インバウンドに力を入れている宿、団体客に特化した宿どれも同じです。
集客が厳しくなってきたからペットと泊まれる宿にしたいので教えてほしい、とよく聞かれます。しかし、これはとんでもない話で、じゃらんや楽天などOTAなどで評価が低ければ何をやってもダメ。ペットと泊まれる宿の経営はそんな簡単なものではないって言っています。
―収容と宿泊料金を教えてください。
現在17室のうち8室をペット専用客室にしています。1室2名利用で1泊2食3万5千円から。ワンちゃんは8キロまでで1匹2200円(いずれも税サ込)です。
これまでリニューアルを重ね施設の充実を図ってきました。直近では露天風呂付きの客室を増やし、ペット専用の信楽焼の陶器風呂を設けたり備品も充実させています。ご利用いただくお客様のアドバイスを具現化してきたからこそ、現在の私どもの施設があると思っています。
お客様の声を聞き、お客様に喜んでいただける宿づくりを行い「ペットと一緒の部屋に泊まれる宿」のブランド化につなげていきたいですね。
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