5類後の新たな観光のステージとは 前観光庁・温品清司氏に聞く(1) 自主的な感染対策に移行
政府は、5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5類に引き下げる方針を発表しているが、この見直しにより感染症対策のあり方が大きく転換することになる。観光庁も新たな観光立国推進に向け、23年度は攻めの政策を展開していく。今回は、急激に回復を見せるインバウンドへの対応など、コロナの5類引き下げ後での「日本観光の新たなステージ」に向けた感染症を含む安全・安心、危機管理の備えについて、観光庁外客安全対策室長(現・国土交通省航空局空港国際業務推進室長)の温品清司氏に語っていただいた。(3月17日に国土交通省で。聞き手は跡見学園女子大学観光コミュニティ学部准教授の篠原靖氏)
観光分野でもスムーズに移行を
篠原 コロナ禍も約3年が経過し、5月8日には5類へと移行される予定だ。感染症対策担当としてどう捉えているか。
温品 コロナ禍によりインバウンド需要は蒸発した。当初は感染の収束が見えない中、感染症対策と経済活動の両立を目指し、感染状況に応じた業種別ガイドライン・新しい旅のエチケットの改定やワクチン、検査を活用した旅行需要喚起策などを進めてきた。5類への移行後は、感染防止対策に留意しながらも経済の本格的な回復を図っていく局面となる。
篠原 昨年10月からは全国旅行支援の開始とともに水際措置の大幅な緩和が図られた。最新の状況はどうか。
温品 日本人の延べ宿泊者数は、コロナ前の19年と同水準となった。訪日外国人旅行者数も、今年2月に148万人となるなど、コロナ前の19年との比較でも中国を除くと77%、含んでも56%まで回復している。
篠原 今後は、感染状況に留意しながら、大きく傷んだ観光立国を復活させる必要がある。
温品 観光庁では25年をターゲットに新たな観光立国推進基本計画を策定した。観光関連事業者と連携しながら、様々な施策を進めていく。
篠原 具体策は。
温品 (1)持続可能な観光(2)消費額拡大(3)地方誘客促進―の3つのキーワードに特に留意し「持続可能な観光地域づくり戦略」「インバウンド回復戦略」「国内交流拡大戦略」の3戦略を総合的かつ強力に推進していく。
篠原 先進国日本の観光立国のブランド化に当たり、安全対策も重要となる。感染症対策は今後どう変わっていくのか。
温品 政府として遵守を呼びかけてきた業種別の感染症対策ガイドライン、新しい旅のエチケットは、昨年12月から段階的な対策の簡素化を進めてきたが、5類移行後はともに廃止となる。個人や事業者には自主的な感染対策に取り組んでいただくことになるが、観光庁では政府の全体方針を踏まえながら、観光分野でもスムーズに移行できるよう必要な対応を行っていく。
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