5類後の新たな観光のステージとは 前観光庁・温品清司氏に聞く(2) 観光危機管理の進展必要
自治体の計画策定、翻訳機器など支援
篠原 訪日外国人への対応として、コロナに限らず、受入医療機関の確保が重要と考えるが観光庁の取り組みは。
温品 厚生労働省と連携し、都道府県を通じて医療機関に「外国人患者の受け入れ医療機関リスト」への登録を呼びかけ、約2200の医療機関に登録いただいている。このリストを日本政府観光局(JNTO)などを通じて周知している。また、登録医療機関の拡大や機能強化のため、リストに掲載または掲載予定の医療機関を対象に、翻訳機器やキャッシュレス対応機器などを支援している。
篠原 災害の多い日本では、その土地に不慣れな観光客でも災害時に安全・安心が確保される環境を整えておくことも重要と考えるが、観光庁の取り組みは。
温品 観光客を守るためには自治体や観光関連事業者による災害に備えた取り組みが重要で、連絡体制や情報提供方法などをまとめたマニュアルを予め準備することが有効だ。このような観光客対応の詳細なマニュアルを策定している自治体は1割、観光関連事業者は3割と、まだ少ない。観光庁ではマニュアル策定を促進するため、昨年3月に自治体・観光関連事業者向けの「観光危機管理計画等作成の手引き」を策定した。(1)減災(2)危機への備え(3)危機への対応④危機からの復興―の4つのフェーズで構成している。23年度予算では、自治体の観光危機管理計画策定の支援制度を新設した。また、観光施設等において円滑な避難誘導のための多言語翻訳機器などの整備や、避難所機能の強化のための非常用電源や携帯電話充電器の整備などの支援についても取り組んでいく。
篠原 自治体、観光関連事業者が観光庁の手引きや支援制度も活用しながら、観光危機管理の取り組みを進めていく必要がある。
温品 「訓練したことはできた」「訓練したことしかできなかった」。これは東日本大震災の被災県の元防災危機管理官の言葉。観光業界は新型コロナでダメージを受けたが、感染症に限らず、さまざまな危機・災害に備えた対応を予め準備することは、観光の強靭性を確保する上でたいへん重要だ。訪日外国人の安全・安心に関する取り組みについては、観光庁のホームページのまとめサイト「訪日外国人観光客の受け入れ」(https://www.mlit.go.jp/kankocho/page03_000076.html)で掲載している。活用してほしい。
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