コロナ後の事業展開は― オリックス・ホテルマネジメント・ 似内隆晃社長に聞く(2) インバウンドが追い風
地域共創でプラスアルファを提案
―24年の事業展開について。
マーケットとしては良い状況が継続していくと考えている。25年に開かれる大阪・関西万博を含めて日本の観光は海外の人から見ると魅力的に映っているように思う。インバウンドについては円安の影響が一番大きく、為替の動きで若干左右されることはあるかもしれないが、しばらくは追い風が続くと見ている。
―DXについてはどう考えるか。
斬新にオペレーションを変えるというところまでいかないとDXとは言えないと思うが省力化、デジタル化はテーマ出しをしながら取り組んでいる。まずは人手不足に対する、効率化、省力化が必須だ。
例えば、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオフィシャルホテルであるホテル ユニバーサル ポートでは、以前はチェックイン前にお客さまが受け付けカウンターに来られて荷物を預けてパークに遊びに行かれることが多かった。預かった荷物は管理が必要となり、お客さまのお戻りにあわせて荷物の部屋入れをしていた。これだけでも多くの人手が取られていたため、今では思い切って鍵付きのロッカーを設置し、お客さま自身に入れてもらっている。これによりオペレーションは大きく改善され、さらに受付の待ち時間の解消にもつながり、お客さまにも評価をいただけている。
また、自動チェックイン、チェックアウトの機械を入れた。事前にお客さまに必要事項をスマートフォンで入力していただき、QRコードの提示だけでチェックインができるようにしたい。実現すれば、チェックインが多い時間帯での慌ただしさもなくなる。お客さまのストレスがなくなるオペレーションの実現を目指していきたい。
―中長期の計画について。
今後、運営する旅館・ホテルの数は増やしていきたい。今は直営で約4400室、MC方式(第三者に運営を委託=マネジメントコントラクト)を含めて約6千室あるが、1万室ぐらいにはしたい。直営のクロスホテルで言うと、拠点として新たにほしいのが東京、福岡だ。旅館は有名温泉地への出店を増やしたい。箱根や熱海には展開しているが、今後は「佳ら久」や「はなをり」といった自社ブランドを認めていただき、運営受託という形でも出店を狙っていきたい。現在、私たちの運営施設は、オリックス不動産で開発するものと外部のオーナーからお借りするものがあるが、情報はつねに集めている。自社ブランドの認知が進み、評価が得られれば、外資ホテルオペレーターが行っているように運営受託施設を増やすことができる。これが実現すれば、出店のスピードは上がっていくと思う。
―最後に、地域の活性化に関する取り組みについて。
コロナ禍の3年間において、地域共創活動を地道に行ってきた。各旅館ホテルに地域共創担当者を配置し、施設オペレーションの一部と位置付けている。継続していくことが将来大きな価値になると考えている。当初は施設マネージャーの理解が進まず、忙しいのにこの活動に何の意味があるのかといった反発もあったと思うが、いまは定着段階に入ったと感じている。旅館ホテルのコンシェルジュ機能の延長にある活動でもあり、しっかりと地域共創担当者の評価していきたい。
お客さまにとってはホテルの滞在だけが楽しみではないはずだ。例えば、大分・別府の場合、北浜や鉄輪などユニークなエリアが多数ある。施設側が地元体験ツアーを企画するなど、施設の魅力プラスアルファの提案をして、地域の人たちと一緒に地域全体のプロモーションを行っていくことに大きな価値があると思う。地域とは互いにありがとうという関係になることが一番良いし、地域が経済的に潤えば回りまわって施設のプラスになると考えている。
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似内 隆晃(にたない・たかあき)社長
89年4月オリックスに入社。2003年3月高知支店長、09年3月戦略営業部長、12年5月グループ広報部長など歴任。17年4月オリックス不動産専務執行役員。19年1月グループ執行役員、オリックス不動産取締役副社長。20年4月から現職。1967年2月24日生まれ
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