産業観光のビジネスモデルを考える 全国産業観光推進協・シンポ(2)
パネルディスカッションでは、産業観光に取り組む地方自治体と民間企業の事例から産業観光のビジネスモデルの可能性を探った。また、全国産業観光推進協議会の須田寛副会長(JR東海相談役)が、収益を上げ継続性のある産業観光のビジネスモデルを提案した。
官民協力と企業連携がカギ
神奈川県横須賀市の吉田雄人市長は2年前に市長に当選すると、従来マイナスイメージと捉えられてきた「基地の町」のイメージの「払しょく」から「活用」へと180度転換。「基地の町」を前面に、民間事業者が進める「軍港めぐりクルーズ」を後押しすることで、年間12万人が参加する人気ツアーに押し上げている。
米軍に提供してもらったレシピをもとに「ネイビーバーガー」を開発。発売から2年で10万食を突破する人気グルメも誕生させた。
「横須賀にしかないものを活用して、民間事業者がビジネスとして儲かる仕組みづくりを応援しています」と吉田市長。ネイビーバーガーも基地周辺でのみ販売するなど、商品価値の維持に努めている。
民間企業からは、洋食器メーカーのノリタケカンパニーリミテド(名古屋市)の鈴木幹根・経営管理本部総務部長が2001年に開園した「ノリタケの森」について説明した。
ノリタケの森は、同社が創業100周年を記念した社会貢献事業。名古屋駅から400メートルほどの本社に隣接する工場跡地を整備した公園で、レストラン、ミュージアムなど一部エリア以外は無料で開放している。
年間40万人、開園から10年で来場者は400万人を超えた。住民や園児が散策に訪れるなど、すっかり地域に根づき、名古屋市から一時避難所に指定されるなど公益性も高い。
「ただ、名古屋市の中心地でもあり、税の負担や緑地の維持管理が大変なのは事実です」と鈴木総務部長。社会貢献事業としての位置づけではあるものの、企業単独の負担ではない、地域や行政が支援する仕組みづくりが課題のようだ。
こうした企業単独の取り組みについて、須田・全国産業観光推進協議会副会長は、企業間の連携や収益をプールする仕組みづくりを提案した。
年間35万人が見学に訪れるトヨタの例もあげながら、「ノリタケやトヨタのように無料で対応している場合、見せる企業と儲ける企業が別という状況が生まれます。複数の企業が連携し収益をプールできないでしょうか。企業に産業観光しようとする気持ち、心があれば、そうしたビジネスモデルは可能だと思います」。
産業観光の提唱者であり、産業観光で最も大事なことは、「心をこめて見ること」と繰り返す須田さんらしい表現で、産業観光への地域全体での取り組みに期待を示していた。
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