聖地への物語が人を動かす ものがたり観光行動学会・「観光と宗教」シンポ(1)
宗教は人を動かす。国内観光で来年一番のトピックは伊勢神宮の式年遷宮であり、出雲大社の遷宮だ。昨年は、法然上人800年大遠忌と親鸞聖人750回大遠忌で多くの人が京都を訪れた。四国八十八カ所、西国三十三カ所も恒常的に巡礼者が後を絶たない。
「東北こそ聖地に」
「観光と宗教」。庶民の旅の起源も伊勢参りと言われるような密接な関係の両者の構造にメスを入れる意欲的な取り組みがこのほど、大阪市天王寺区の應典院で行われた。ものがたり観光行動学会(白幡洋三郎会長=日本国際文化研究センター教授)がシンポジウムを開いた。
相愛大学教授で宗教学者の釈徹宗さんは基調講演で、近年旅行動機の大きなウエイトを占めている聖地巡礼・パワースポットの構造を示した。
聖地の構造は同心円的に3層の構造をしている。核になるのは宗教性を強く帯びたritual(儀式)であり、ceremonyがその周りを覆い、一番外側がfestivalでできている。釈さんは、その中心に人を導くものは「代替のきかない場の語り」といい、それが聖地の求心力になるという。エルサレムでは悲劇を転換できる装置として語りが用いられており、その結果として「聖地の物語に突き動かされて人は移動している」のだと指摘する。
東北もそうなる可能性がある。圧倒的な非日常がもたらせたことを「追体験し共有させる」語りによって。釈さんは悲劇の求心力を「生きる力に転換する」ことで、東北こそ聖地になるとした。
→聖地への物語が人を動かす ものがたり観光行動学会・「観光と宗教」シンポ(2)に続く
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